Solid Black 13.

ノルン三女神 時の守護神がその闇を包囲した。
時間が止まる。この空間の再構築が行われる。
それは繭の様な形になった。


「さぁこれで大丈夫だわね・・・あ、あれ?」
「姉さん?」
「ウ、ウルドっ!まさか失敗したんじゃ・・・」
ノルン達が再構築を行った筈の、その空間にある筈の
物体が無い事に気がついた。
「なんで?何でなのよぅ!」
スクルドの叫びにも似た声だけが虚しく響く。


全てを飲み込んで来たその影は、まさに影に過ぎなかった。
それとも包囲した瞬間に瞬間移動を行ったのか?
「まさか・・・本体は・・・」
ウルドの声に緊張感が走る。
「姉さん・・・もしかしたら螢一さんの居る場所に…」
ベルダンディーの声が震える。


一旦再構築を敢行したノルン達は、その場を動けない。
一定の時間をかけて、その繭から羽化するように時の動きが
始まらない限りは...
「私、すぐにでも行きたい!螢一さんっの元へ!」
そんなベルダンディーの訴えも実行は難しい。


「くっ・・・やられた」
ウルドの沈痛な声が、さみしく響いた。





俺は小さな船の上に居て、漆黒の水面に浮いていた。
どんよりとした空気感と、得体の知れない場所で
船はどこへ進もうとしているのだろうか。
水面に手をやってみた。それは水のような気がしたが
確信は持てなかった。
ただ俺が泳げない理由が、その意味がここにあると感じて
不思議な感触が脳裏を過ぎった。
「海は人を簡単に殺してしまうんだ」
俺は思わずつぶやいていた。
「なんだろう・・・」
ある島へ小さな船を使って上陸を試みた事を思い出した。
それが何時の頃なのか、それとも誰かの記憶の追憶なのか
それすら分からない。
ふと前を見ると、小さな黒い猫が座っていて、俺の方を
じっと見詰めている。
あの時の猫だ。暗闇の中だけど、俺は確信した。


「おまえも一人なんだな。こっちへおいで」
俺は手招きし、猫を呼んだ。
猫は音も無く近づいて来て、俺の膝の上に乗った。
子猫の体の温もりを感じた俺は眠たくなってしまった。
そして、そのまま眠ってしまった。


アイタカッタ アナタハワタシノモノ ダカラ...



Solid Black 13.


by belldan Goddess Life.