Solid Black 14.

ユグドラシルの中央コントロール室にて
ペイオースは愕然としていた。
「まさか、あれが影だなんて…」
ベルダンディー達の拡散した力が集約するまでの時間
ノルン達の力は無効になってしまう。


オペレーターから伝令が入る
「ペイオースっ!地上界に異変が!」
森里家、他力本願寺を中心として件の影が展開しているのを
モニターが捕らえた。
「どう言う事ですの!すぐに調査してちょうだい!」
森里螢一の身を案じるが、天上界の攻撃は一切受け付けない
その影、その暗闇に対して成す術も無い事を悔やむ。
このまま、この地上界も暗闇に飲み込まれてしまうのだろうか。




 気がつくと俺は猫実工大男子寮に居た。
そうだ、先輩に頼まれて留守番をしていたんだ。
「青山先輩に電話をしなくちゃ」
電話がつながる。青山先輩が出る。
「先輩、ちゃんと連絡しておきましたからねっ」
俺は受話器を置いて、ため息を付く。
ほらね、何にも起こらないさ。手探りで探したタバコに火を付けて
また、ため息を付いた。
「何か良い事無いかなぁ」
俺は背が低いし、お洒落もわからない。
「彼女、ほしーなぁ」
この間、なけなしの勇気を振り絞ってデートに誘った沙夜子にも
あっさり振られてしまった。そりゃ無理はないが、それでも一縷の
望み位はあったと思うんだよな。
その後、先輩たちの激励かなんかで居酒屋をハシゴした。
「振られたのか?!そりゃーいい!」って田宮先輩達が言う。
「それは漢の勲章みたいなものさっ」と大滝先輩が言う。


そんなものさ、と俺はつぶやく。
このままずっと、こんな調子で大学生活が過ぎて行って
卒業して、どこかに就職でもして…
あれ?
でも俺・・・何か忘れている。


外へ出て、空を見上げて見た。
故郷よりは見えない星空でも、少し位は見える星を見ながら
自分の事を考えた。
このまま平凡な日々を送って、何事も無いように、そう、この空に
輝く星が、何も変わらずそこにあるように、俺もまた在るのだろうか
夜風が吹く、短い髪を通り越して行く。
振り返る。でもそこには何も無い。当たり前だ。
ポケットからタバコを取り出し、安物のライターで火を付けた。
ひとくち吸い、ふぅ〜と煙を出す。煙は風に流されてどこかへ行く。
その流れを見ながら、何故だか納得している自分が居た。


寮に戻る前、買い置きのカップ麺とタバコの補給にコンビニへ向かった。
その途中で、髪の長い女が前を歩いていた。
風になびくその髪を見惚れながら俺は、何だか懐かしい気持ちになった。
「君のような女神に、ずっとそばにいてほしい・・・か」
なんてね、と俺は苦笑い。
そして、とても寂しい自分が(それは普段もそうなのだが)たまらなく嫌で
そんな事を感じてしまったと思ったんだ。


でも俺・・・何か忘れている。



Solid Black 14.


by belldan Goddess Life.




*** *** *** ***

Fall is here.
今日は誕生日だった…しかもこんな鬱展開のお話を更新しながら。
プロット見ながら更新してます。随時変更しながら...
しかし秋は、ながら…って感じデスネ(笑)
だから、こんな小話を書いてみたんですが…


「Fall is here」


TVを見ながら、レポートをしながら、ベルダンディーの淹れたお茶を
飲みながら俺は、実際何にも集中してないのに気が付いた。
「あ、はは・・・何してんだろ?」
「どうかしました?螢一さんっ」
「あはは…あのね」
俺が何にも集中出来ない事を告げると彼女は
「それは収穫が多かったからですよ」とにっこり笑った。
収穫と言うか、責務と言うか、何にせよ大量だな、と思った。
「螢一さんっ・・・あ、そうだわっ!」
お散歩にでも行きましょう、とベルダンディーが誘った。


夏の陽気が残る日中を避け、夕暮れ時の散歩に出かけた。
そう言えば最近はこんな時間を取る事も無かったな、と思った。
時折吹く風が、夏の熱気を含まなくなっていた。
「わぁ 涼しいですね」
「うん そうだね」
それでも繋いだ手は、とても熱気に包まれていた。  おしまい。


秋は収穫の秋 芸術の秋 それとも食欲の秋?