Solid Black 16.

光が見える。そういつか見た事のある光りだ。
その光は、線を描き降臨して来る。


黒い子猫が、俺の横にちょこんと座っている。
俺は起き上がり、周りを見渡した。
ここはお寺の母屋で、俺は居間に居る。
「何だったんだ?今のは…」
夢?きっとそうに違いないと俺は考えた。
「何だか知らないが、助かった」
安堵した俺は、何かしら胸騒ぎを覚えて縁側から外へ出る。


空から光の帯が降りてくる。
見た事がある。それはとても幼い頃だ。
その光は、境内を目指している。


光はやがて、地上に降り立つ。そしてその姿を現すのだ。
「ベ、ベルダンディー!そうなのかっ!」
俺は駆け寄るが、その光が強過ぎて近くに行けない。
ベルダンディーベルダンディー!」
俺は声の限り叫んだ。


その光の中から、荘厳な声が聴こえた。
「いいえ、違いますよ。螢一さんっ」
光が人の形を成形し出すと、そこの女神の姿が在った。
「私はエルダ…あら、この姿だったら…そうね、マリアと呼んで下さいね」
そう言ってニッコリ微笑みかけて
「あなたがあの娘のお婿さんなのね、うふっ」
とても綺麗な笑顔を見せた。


その女神は、あまりにも荘厳過ぎて、光が、後光が差していた。
その顔は、ベルダンディーを大人にしたような、さらに落ち着いていて
さらに優しい顔だった。
「あの・・・あなたはベルダンディーの・・・」
俺は恐る恐る聞いてみた。
「そうなの〜私があの子達のママなのよん〜」
何だかとてもお茶目だ。


その女神、エルダ…今はマリアの側には、女の子が立っていた。
「あ、そうそう、この子があなた達の赤ちゃんなのよね」
赤ちゃん…と言っても、すでに立っているし、見れば幼稚園生くらいに
見えるのだが…
「あ、でも…この子の今の姿は、完全では無いの」
君に会いたいから、思念体としてこうして姿を整えてるのよ、と言う。
「お父さんに会いたいって、ね」
その子は、小さく頷いた。


「あの…マリアさん?えっと・・・」
俺は困惑している。だってそうだろ?いきなりお父さんって…
「あら?聞いてなかったのかしら?あの子ったら、もうっ」
本気では怒ってない…と思う。だってベルダンディーの母親なら
怒ると彼女以上に怖そうだから。
「あ、そう言えば、そちらに戻る時に・・・」
素敵な報告が出来る、とベルダンディーが言ってたのを
思い出した。あれは、この事だったのか。


「それから…ああ、やっぱり此処に来てたのね」
そう言ってマリアさんは、俺に付いて来た黒い子猫を見ると
「帰りましょうね。あなたの居場所はこの子の中よ」
そう言って、幼子を指差した。


「にゃお」
その黒い子猫は、手招きする女の子の元へ走り出す。
そして、女の子の両手に抱かれ、彼女の胸の中に消えて行った。
その光景を俺はじっと見ていた。
「これで良しっ 万事解決って所だわね」
それから俺の方を見てマリアさん
「この子の力は、本当にすごいの!素敵だわっ」
ヨシヨシと女の子の頭を撫でている。
「詳しい話は後回しね。それから…ねぇ、出てらっしゃいな」
母屋の後ろを見据えて言った。


「ちぇっ…惜しかったわぁ」
そこにはヒルドの姿があった。



Solid Black 16.


by belldan Goddess Life.