Solid Black 17.

天上界ユグドラシルの中央コントロール部屋
モニターに映し出されているのは、ノルン達が抑えている
制御した世界の繭だ。そして、もうひとつがベルダンディー
構築した世界、空間だった。


その空間に異変が起こる。激しく揺り動いた後、光が消えた。
「ペイオース!また異変が起こりました」
オペーレータは消えた光の補足に手を拱いていた。
ペイオースは思考した。もしかしたら、あの偉大な星歌の制御下で
何かが行われているのでは?と。
「しばらく様子を見ていてちょうだい」
今はまだ地上界にコンタクトは取れない。後は時間の問題なのだ。
「取り合えず、出来る事をしましょう」
出来る事と言えば、見守るしかないのだが、これだけ後手後手に
回ってしまった現実は、否定できない。




他力本願寺の境内では、マリアとヒルドが対峙している。
「ダメよ、ヒルドちゃん。オイタしちゃ」
マリアさんは、あのヒルドを子ども扱いしている。
「でもね、姉さん…あたしも欲しかったのよね〜」
そう言って苦笑いをするヒルド。
「あなたの事だから、また魔界のバージョンアップとか言って…」
この子の負の力を使おうとしたのね、とマリアさんは続けた。
「姉さんには適わないわねぇ…正解よん」
ヒルドちゃんったらっ!もうっ!」
「ごめんごめん…怒らないでよ、姉さんっ」


俺は二人の会話を、だたじっと聞いているしかなかった。


「じゃあ私達は、帰るとしましょう」
マリアさんは言った。それから
「螢一さんっ また遊びに来るわねっ ね」
と念を押されてしまった。
「それと…ヒルドちゃん?あなたも私のところへ遊びに来なさいね」
「ええ〜!」
「素敵な衣装を用意したのよっ 素敵よっ」
「うん…分かったわ、姉さん…」


「では、ごきげんよう
そう言ってマリアさんと女の子は、光の中に消えていった。
残された俺とヒルドは、ぼんやり空を見つめていた。
「あのさ、ヒルド…あの人、本当のお姉さんなのか?」
「そうよぅ〜螢一くんっ 怒ると、とても怖いのよね」
ヒルドが怖いって…どんな感覚なのだろうか。
「あ、あたしも帰るわね〜ウルドちゃんが帰ってきたらよろしくね」
ウインクひとつ残して、ヒルドも消えていった。


黒い子猫と、小さな女の子…俺にはさっぱり分からなかったが
ベルダンディー達が帰ってきたら、聞けば良いと思った。


空はすっかり夕暮れ時で、茜色に染まった雲が東へ動いている。
何だかとても疲れた。俺は母屋へ向かって歩き出した。






Solid Black 17.


by belldan Goddess Life.