Solid Black 18.

暗闇の中、手探りで歩いていた時間
迷宮の中に踏み込んでしまって、途方に暮れていた時
そんな時も、きっと探し続けていていたものは同じなんだ。


数日後、ベルダンディー達が帰ってきた。
それはちょっと買い物に出かけていた。そんな感じで。
「螢一さんっ ただいま帰りました〜」
いつもの顔ぶれ、ベルダンディー、ウルドそしてスクルド
相変わらず、それぞれの個性丸出しで玄関に立っている。
「おかえり〜」
でもひとつ違った事がある。それはベルダンディーが幼子を
抱いている事だ。
「けーいち!あんた達の子供よん」
ウルドはニヤニヤ笑って言った。
「ホント、ケイイチに似なくて良かったわぁ〜」
スクルドも笑っている。


本当に帰ってきたんだ。
何だが良く分からない事がたくさん起こり過ぎて、俺の頭は
混乱していたのだが、とにかくこうして家族が居る事に感謝した。
家族?言い過ぎかもしれないな、と俺は思ったが
でも良いだろ?


久しぶりに、みんなのティールームに全員が揃った。
ウルドは天上界で起こった出来事や、得体の知れない物との格闘
そんな事を話してくれた。
「大変だったわ〜でも、その正体がこの子だっただなんて、ね」
ベルダンディーが抱いている幼子の額を撫でて
「あんたも大変だったわよねぇ・・・」
と、俺に向かって言った。
大変だった…そうかも知れない。でも、それが夢か現実なのか
今でも理解出来ていない。
もう終わった事だし、ね。
「螢一さんっ 私…とても心配でした。でも・・・」
螢一さんっなら、乗り越えて戻って来てくれると信じてました。
そうベルダンディーは言葉を続けた。


それから、マリアさんが尋ねてきてくれた事、小さな黒い子猫の事
そんな事を彼女達に話した。
ウルドはとても驚いていたが「在り得なくも無いわねぇ」と言った。
「そんな事出来るのは、人間では多分、けーいちだけね」
面白い事もあるものね、とウルドは笑った。
「母が…救ってくれたんだわ」
幼子をあやしながら、ベルダンディーは続けて言った。


世界を構成するのは、光と影…俺とベルダンディーの間に出来た
小さな命にも、それは当てはまる。
ベルダンディーが分光した、その光があまりにも強烈過ぎて
影の部分が、分離したと言う訳だ。
その影は、自分の縁り代を求めて宇宙を彷徨い、俺の元へ来た。
それは辿るべき波長がここにあった、と言うべきなのか。
以前、ベルダンディーが連れて来た小さな猫の姿を採って
健気にも俺の元へ来た。そう言う訳だったんだ。


「そうだ、この子の名前は…決めなくちゃ」
俺はベルダンディーに決めているの?と尋ねた。
「ええ、母の名を貰って・・・マリアベルと」


「マリアベル
「ええ」
「とてもよい名前だね」
「はいっ」


それは、まるで雲間から差し込む光の束
世界を照らす祝福
そして俺達の家族がひとり誕生した事を知らせる
名前だった。


「マリアベル
マリアベルを覗き込み、俺は彼女の名を呼んだ。



Solid Black 18.


by belldan Goddess Life.