Solid Black 20.

それはまるで、ひとり取り残されてしまった少女のように
悲しくて、切なくて、だた泣く事しか出来なかった。
わたしはこんなに小さくて、儚い存在だったのか?


「マーちゃん マーちゃんっ!起きなさいっ!」
わたしを呼ぶ声がする。それはとても懐かしい声だ。
いつの間にかわたしは、暗闇の中に居て
そこでとても悲しい思いを体験していた。
何も見たくない、聴きたくも無い、知りたくも無い。
そんな思いが芽生え、育って行って感覚を閉じてしまったんだ。
「マーちゃん・・・もう大丈夫だから…ね」
その声が近くに聞こえて来る。そしてわたしを取り囲む暗闇に
暖かさが浸透してくる様だった。


わたしはそっと目を開けた。


「マーちゃん、お帰りなさい。任務ご苦労さまっ」
わたしの瞳が捉えたその姿は、とても優しさに満ちていた。
その姿は、わたしを抱きしめて
「怖かったでしょ?でも、もう大丈夫よん」


「ヒ、ヒルドさまっ?!」
それはわたし達、魔界の者が愛してやまない存在。
「どうしてあなたが此処に?」
それは魔界の者が、もっとも畏怖する存在。
「わたしを助けに来てくれたんですかっ?」
そしてわたしの母親的存在でもある方...
「そうよん〜ちょっと探したけどね」
わたしは知らぬ間に彼女の胸元で嗚咽していた。
「もうダメだと…だから…」
「はいはい、分かってますよ」
そう言ってヒルドは、マーラーを優しく抱擁した。


任務として、空間に突然現れた謎の黒い影の探索に赴いた。
それでこの体たらくだ。ヒルドさまっはかなり憤慨している
そう思って、戦々恐々していた。
しかしそれ以上に、わたしがそこで体験した事の方が
本当に怖かった。
ヒルドは怒らない・・・いやむしろ新しい楽しみを見つけた
獰猛な猛禽類の様に、クスリと笑い。
「マーちゃん、魔界で少しお休みしたら、すぐに地上界に
行ってちょうだいね」
「はっ!了解でありますっ!」
「いやぁね…ヘンなお返事ねぇ…」
とても機嫌が良い。それはマーラーにとっても嬉しい事である。
「魔界のシェアーを広げるべく、頑張る所存ですっ!」
マーラーがそう言うとヒルドは
「あ、それはもう良いの…あのね、これからはね」
森里家の新しい住人である、ベルダンディーと螢一の子マリアベル
に対して監視を行い、逐一わたしに報告をしてほしいと
ヒルドは言葉を続けた。
「はぁ…」
「ま、しっかりやりなさい ね」


わたしには彼女、ヒルドさまっが何を考えているのか理解出来ない。
それでも思う。このマーラーは命に掛けて任務を遂行します、と。


久しぶりに戻った魔界、そしてわたしの部屋にあるベットに
疲れた体を横たえて、この世界の事を考えてみるが、すぐに睡魔に
襲われてしまった。
部屋の明かりを消した。そこにも当然暗闇が訪れる事になる。
でも
この闇の中には悲しみは存在しない。
ヒルドさまっが作られた、この魔界には彼女の思いが篭められている。
それがわたしには、とても甘美なものとして与えられているからだ。



Solid Black 20.


by belldan Goddess Life.




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個人的宣伝(笑) 別館 Goddess Life Annex. にて物語を展開中
多分1話〜3話位で完了する予定。
噂の螢一くんが、タバコを止めた理由ってお話です。
暇つぶしにでもどうぞ(笑)