ツーリング日和

風に含まれる湿度が変わった。
朝、起き抜けの時間帯に、ふと思った。
「そうだ、ツーリングだ」
そう思って、また寝てしまった。


「と、言う訳なのよね〜」
千尋さんは、笑いながら話をする。
俺も最近はツーリングなんぞ行ってないしな〜と思った。
「それで千尋さんは、どこへ行くつもりなんですか?」
ベルダンディーの淹れてくれたお茶、仕事の合間の休憩時間
俺たちは昨日思いついたと言う、千尋さんの思いに付いて
話をしている。
午前中に片付いてしまった発注の他には、今日は何も無い日だ
とは言っても、暇を良い事にしてサボってばかりじゃダメだし
何か無いかな?と言う訳で会議がてらお茶の時間を楽しんで
いるって訳なんだが...


「そうねぇ...やっぱり季節は秋ですもん、紅葉よね!」
「わぁ〜紅葉ですか〜♪」
ベルダンディーが紅葉って言葉に、それは素敵に反応した。
「あら、ベルちゃんも分かる?紅葉ってステキよねぇ〜」
「ええ、とても綺麗ですもの」
話が若干ツーリングとはズレテイルような気もしなくは無いが
キレイなメカニックお姉さんと、麗しい女神さまっの会話には
いつも華があるよな、と俺は思って見ていた。
「んと…森里君は、何かある?」
「え?俺ですか…あの…」
いつぞやの温泉旅行の事が頭を過ぎってしまって
俺はどうすべきが思案していた所だ。
あの二の舞は嫌だからなぁ…嬉しい事もあったけど ね。
そんな事をぼんやりと思い浮かべている俺に
「分かったわっ!あなたも行きたいって事でOKよねっ!」
「ええっ!あ…まぁ、その…はい」
「わぁ〜良かった♪螢一さんっ 行きましょうね♪」
そしてベルダンディーも、とても乗り気であった。



思い付いたが吉日、秋のツーリング日和
しかも二度寝する程、穏やかな気候だ。
あ、二度寝千尋さんだけだけど…
しかしこそは商人魂が炸裂したのか、有志を募って
かなりの人数になってしまった。
もちろん猫実工大自動車部は現役OBに関わらず
強制参加を命じられた。
強制力って、もしかしたら千尋さんの、この力もそうかな?
とか考えて笑ってしまった。
次の日曜日、ワールウインドは臨時休みを取った。
そして明日がその日だ。


「待ち遠しいですね〜」
明日は晴天に恵まれそうだ。だって女神が微笑んでる。
「そうだね〜」
俺は、気温と湿度が変化したのでセッテイングに余念が無い。
「私…たくさんお弁当作らなきゃ♪」
一応、主催者側からお弁当は出ると通達したので
ベルダンディーがその任を拝命したと言う訳だ。
「しかし、大変じゃないの?そんなにたくさん・・・」
「大丈夫ですっ!さぁ!がんばらなきゃ!」
長袖のブラウスの袖をたくし上げ、キリリとエプロン姿に
変身した女神さまっは、台所へと出陣した。


「まるで秋の大運動会だよなぁ・・・」
俺は苦笑いして、そして空を見上げた。
空は、いつになく優しく清んでいた。


 ツーリング日和。


by belldan Goddess Life.