潮風に吹かれて 2

夏の終わりを感じたいと思った。
最後の夏のしっぽを捕まえて「バイバイ」って言うの。
面白いと思わない?
思いつくまま走らせた愛機が着いた先は、南紀だった。
以前、ベルちゃんと森里君とで行くはずだった九州の地
その前に立ち寄った…と言うか、ここでリタイアしたんだっけ
海と山のロケーションが何となく気に入って、それで来た訳。


森里君達…驚いているだろうな、もしかしたら
「相変わらずだよな〜」って苦笑しているかも
今、もしかしたらクシャミしているかもっ!だなんて考えて
笑っているあたしも、あたしだわ…


所々走り難い道もあるけど、海と山が迫ってくる海岸線って
ステキじゃない?
潮風を受けながら、あるいは追い風に押されながら走るバイクは
生まれて来た事に、その喜びに、歓喜の声を挙げている。


あたしは、風になるっ!


 * * * *


『臨時休業』の張り紙を見ながら、途方に暮れていた二人も
このサプライズな休暇を、どう過ごそうかと余裕が出て来た。
千尋さんは・・・きっと大丈夫さっ」
螢一はベルダンディーに向かって微笑みかけた。
「はいっ!私もそう思いますっ」
だって、今感じた…千尋さんがとても楽しそうに笑っているのを
千尋さんは、きっと風を感じに行ったのですねっ」
ベルダンディーは、今感じた事を螢一に素直に話した。
「そうか…ははっ 千尋さんらしいや...」


螢一は、その後少し思案していた。
それを不思議そうに見詰めるベルダンディー
「どうかしました?」
「あ、あのね…俺達も風を感じに行かないかって…」
「えっ?あ…」
ベルダンディーの顔が見る見る喜びの表情に変わって来る。
「わ〜 私もそう思っていたんです。風を感じたいって!」


「じゃあ、行こうか」
「はいっ 螢一さんっ」
螢一は、バイクの始動を始めた。今日も調子は良いや、と彼は
感じた。
だって俺が整備した、俺の愛機だもんな〜当たり前だよな
コツンとタンクを叩く、これは何時もの儀式だ。
「よろしくな、相棒」
螢一の愛機、BMWサイドカーは、ワールウインドの敷地から
スルスルとすべるようにして、公道へと進む。
前後左右の確認を怠る事無く、バイクは流れに合流した。
「よろしくね、バイクさんっ」
ベルダンディーは螢一の真似なのか、サイドカー
ウインド・シールをコツンと叩いた。


俺達は、風になるっ!



 潮風に吹かれて 2


by belldan Goddess Life.