お喋りな風と

風が心地良い秋の日の夕暮れ時に
久しぶりに二人きりになれたのは幸いだった。
「螢一さんっ お茶にしませんか?」
と、ベルダンディーの誘いも快く受けて
先に俺は縁側で、ぼんやりと庭を眺めていた。


日中の陽気から一変して、この時間帯は風向きが
変わったかのような、そんなひんやりとした空気が
流れる。
「やはり風向きか?幾分北よりの風なのかな?」
右手の人差し指を唾液でちょっと湿らせ、天に掲げる。
すると風向きが分かったような気がした。


その姿を、俺の後姿を見て、笑い声がする。
ベルダンディーの軽やかな声だ。
「螢一さんっ?そのポーズは…」
もしかしたら彼女は、俺が宇宙への交信をしているのでは
とか、或いは新しいヨガのポーズなのでは、と考えている
かのしれない。分からないが。


「あ、ベルダンディー 実はね、風向きを見てたんだよ」
そして俺は、また同じ様にして指を掲げた。
するとベルダンディー
「螢一さんっにも、風が見えるんですねっ!」
と大喜びだ。だがしかし、彼女のようには俺には見えない。
その事を伝えると、少し残念そうな顔をしたが
「でも感じる…そうですよね?わぁ〜」
とゴキゲンだ。


俺の彼女は、実は女神さまっ。


「ねぇベルダンディー?君の世界はどんな所なの?」
俺は彼女が淹れてくれた、紅茶を飲みながら尋ねた。
「そうですねぇ...一言で言えば、こちらの世界の春のような
そんな感じなんです。いつも、心地良い風が吹いていて」
「そうなんだ」
「ええ」


「いつか…行ってみたいな...」
と、俺は思わずつぶやいてた。
「わぁ!螢一さんっ!一度一緒に行きましょう!」
ベルダンディーは満面の笑みだ。
でも待てよ…天上界だろ?地上界に在籍している人間が
おいそれと行けるのだろうか?
そんな事を徒然に考えながら、ふと彼女の方を見ると
とても気持ち良さそうに、彼女の髪が風に揺れていた。


「そうだね、いつか・・・行きたいね」
「はいっ!」


by belldan Goddess Life.