あ・・・

赤信号で止まった、彼のバイク
明るい空の下、私とふたりで
甘やかされてる恋人のよう?
曖昧な返事に、ちょっとスネて見た。


呆れるくらい、ずっと傍にいるのに
あなたって、どうして黙っているのかしら?
あなたからの言葉を聞きたい。


あ・・・から始まる言葉。


この世界の不機嫌な出来事や、笑えない事実も
時と共に歩んでいく私たちの、それは素敵なエッセンス
どんな時代に生まれても、それが最悪の時代でも
私はあなたと出会い、そして傍にいたいと願うの
時々、神様のいたずらかしら?と思案もしてしまうけれど
それでも私たちは、最高に幸せになれると信じてる。


螢一さんっは、今何を考えているのかしら?
そっと覗いた彼の横顔、その瞳は前を見据えて
それはもしかしたら、私たちの未来なの?
私は厭きれるくらい、見詰めているわ
彼は気が付いて、私の方を見た。


「どうしたの?ベルダンディー
「何でもないんです・・・」
思わず、下を向いてしまった。


信号が赤から青へと変わる。ゆっくりとバイクは
進行し、速度を上げて行く。
思いもきっと、こんな風に加速してくれたら
大好きなあなたから、聞きたかった言葉が出てくるのかも


あ・・・から始まる言葉。


思いは当の昔に伝わっている。
思いは願いは、形を変え、存在し出した。
だから私は、ここに居るんだわ。
それでも、聞きたいと願うのは
わがままかしら?


「螢一さんっ…」
そっと呟いて、小さな声で言ってみた
「愛しています」
法術も何も使わない。でももし、思いが風に乗って
彼の耳元を訪問したら、彼は答えてくれるかしら?
そして私に、言ってくれるかしら?


あ・・・から始まる言葉を。




by belldan Goddess Life.