遥かなる想い出/不思議な未知の話

マリアベルはウルドの武勇伝を聞くのが好きだ。
遠い日の出来事、それは彼女にとっては想い出でも
マリアベルにとっては、不思議な未知の出来事。


「あの時は、そりゃ参ったわわよ〜」
ウルド姉さんが、遠い目をして追想しているのを
ワクワクしなから、その話の続きを待っている。
「そ、それで!ウルド姉さまは、どうしたの?!」
マリアベルは、そのつぶらな瞳をキラキラと輝かせて
続きを催促した。



 ある日の地上界、それは遠い昔の事
 小さな島を襲った暗黒の王は、錯乱して
 世界を滅ぼそうと、全ての昼を
 覆い隠した。
 ワルキューレと共に、かの地へ赴いた
 ウルドは、自分の雷の法術とグングニル
 で、暗黒の王を一蹴したと言う話だ。


「あたしの法術とグングニルの力が相乗効果してね
それで悪いヤツをやっつけたのよね〜」
ウルドは不敵な笑みを浮かべ、マリアベルを見詰めた。
「わぁ〜!ウルド姉さまは、正義の味方なのねっ!」
「そうよ〜あたしはセイギの味方なのよ〜」
「すごーい!」
「ま、大した事は無かったケドね」
ウルドはご満悦だ。


素直で良い子だとウルドは思っている。
こんな姪っ子に恵まれたのは、まさに奇跡だと
はたから見れば、ただの子煩悩な伯母さんなのだが
この言葉は禁句だった。


「あたしもウルド姉さまのような、正義の味方になるの!」
「そりゃ良い心がけだわねぇ」
ウルドは微笑み、それから言葉を続けた。
「でもね、マリアベルの未来はあなたの物なのね。だから
たくさん勉強して、色んな事を学んで、それから考えても
悪くないと思うわよ?」
「ウルド姉さまのように?」
「おほほ…そうね、あたしのように、ね」
そう言ってから、ウルドはマリアベルの頭を撫でた。


過去を司る女神ウルドと、現在を司る女神ベルダンディー
娘であるマリアベルには、形は違うが共通点がある。
ウルドが半神半魔である事、マリアベルが女神と人との子で
あると言う事だ。
マリアベルはそれを知ってか知らずか、ウルドに話を催促する
たくさんの過去の話は、それだけで雄大な歴史を学ぶ事になる
それが彼女に、これからどのような影響を与えるのか・・・


遥かなる想い出と、不思議な未来への話は
遠くて近い明日への道しるべになるのだろうか
新しい命は、新しい世界を求める。
形骸化され、その命を失った過去の遺物は、やがて
その使命を終え、次の世代へと物語を綴るのが歴史の史実だ。
構築され、再構築され、破壊され、構築される世界の果てへ
導かれし者の、その任は大きい。


「ウルド姉さまっ 大好きっ!」
頭を撫でられ、とても良い気持ちになる
マリアベルはウルドの胸に飛び込んで、甘える。
「マリアベルは、まだまだ甘えん坊さんねぇ」
そうは言って見たものの、一番デレデレなのがウルドだった。



 遥かなる想い出/不思議な未知の話。



by belldan Goddess Life.