未来への翼

ああっ女神さまっ〜未来への翼〜


雲にかかる月の明かり 明日の予想は
どんな景色を彩るのだろうか
瞳を閉じて そっと願いをこめて
すべての未来が 明るく彩るようにと...


風が運んできた 異国の物語には
スパイス エッセンス 言葉の意味が
まるで違うのだけど でも変わらない
思いが 言葉が あるのですね


相手を思う心 愛しく感じる心
考えるより先に 口にしたい言葉は
いつも とても暖かくて
いつも とても照れてしまう
それは心から あなたを思う気持ちだから


どんな世界でも この日は誰もが優しく
どんな時代でも この日だけはうれしい
そんな日がある事 そんな日を待つ喜びは
あなたと共に在ると言う事実そのもの


刻まれた時の中は 想い出と昇華して
ふたりをとりまく世界を彩って行くのね
何度目かしら…今年も待ち遠しい
聖なる夜に 賛美歌の声響いて


「メリークリスマス」




慌しい日々も、そう長くは続かない。
どうにかみんなで過ごせるクリスマスに、俺は
ひとり安堵感を満喫していた。
色々あって、ウルドがシャンパンを調達してくれたし
スクルドのクリスマスツリーは革新的な出来栄えだ。


そして俺は…ああ、俺は何もしていないよな
「あはは・・・」と乾いた笑い声を出してしまう。
ちょっと落ち着かなくて、ちょっと嬉しいそんな時を
言葉で表現するのは難しいよな、なんて考えてた。
波乱に満ちた2007年の森里家の年中行事も後少し
クリスマスが終われば、大晦日、そして元旦だよな。


しかしウルドのやつ…こんなにたくさんの酒を
どこから調達したんだろうか、これじゃまるで
酒屋の倉庫か何かだ。しかも高価な酒だよ。
「ほらほら、螢一も飲んで飲んでっ!」
どこから用意したのか、華奢なグラスに注がれた
黄金の酒を、俺は一口飲む。実に美味である。
スクルドの革新的なツリーは、どうも願い事を記入
出来る装置が付いているらしいのだが、どうやら
七夕の短冊か何かとごっちゃになっているみたいだ。
「ここに螢一の願い事を記入するの、そうそう」
「で、どうなるんだい?」
「そうすれば、願い事の成就確立が算出される訳なの」
「ふむふむ…算出か…」
まぁ、当たるも八卦、当たらぬも八卦と言うから
そんな類のものだろうな、おみくじ感覚ってやつか。


「出たわっ!ほら、これが螢一の願い事確立よっ!」
「ほ〜どれどれ?」
俺はスクルドから受け取った紙切れを見た。
「え?何コレ?0.3%って…」
俺は確率論には明るくないが、どう考えてもこれって
ただの確率論だろ?
「あー!バカにした!ゼロじゃないのよ!ゼロじゃ!」
「はいはい、分かってますよ...」


台所からベルダンディーの登場だ。
トレーにはクリスマス・スペシャルのケーキが載っていて
素晴らしく甘い芳香が部屋を充填して行く。
「出来ました!どうでしょうか?」
「わぁ〜お姉さま〜ステキっ!美味しそうっ!」
「ほぅ〜今年は更に豪華よねぇ」
「ご苦労さま、ベルダンディー


俺はベルダンディーの手伝いをしたい。ただそれだけの
えらく素直な思いだけだった。
「手伝わせてよ」
ケーキをテーブルに載せたベルダンディーは微笑む
「はい、お願いしますね 螢一さんっ」
ケーキをみんなに取り分けてあげようとして、俺は
ナイフをケーキに向けて、ふと考えた。


どう分割するのが最適なんだ?


「あ、螢一さんっ それはですね、こうして…」
ベルダンディーが見るに見かねてなのだろうか
ナイフを持つ俺の手を取った。
「こうすれば、上手く出来ますよ」と言って。


ケーキを前に、俺とベルダンディー
さながら結婚式のセレモニーである『ケーキ入刀』を
しているかのようであった。


「あら、こんな時にリハーサルなの?」
ウルドはニヤニヤと笑いながら
「結婚式って、そんな事もするんでしょ?」


「何ですって!ちょっと!螢一っ!あんたって…」
スクルドが瞬間湯沸し機と化した。


「違う違うっ!誤解だよ〜」
「そうですよ、スクルド 結婚式には…あ...あのぅ...」
ベルダンディーが赤面し出した。


待て待て待て待てっ!ちょっと待てぃ!
今夜はクリスマスイヴなんだよ。みんな落ち着け!
そして、俺も落ち着け…



クリスマスの日も、こんなに騒がしい森里家であった。



クリスマスの夜/未来への翼



by beldan Goddess Life.