Rain Song

待ち遠しいのは、晴れの日だけど
今日は雨、でも悲しくなんかない。


雨の音が好き。
ほら、良く言うじゃない?
「雨降って地固まる」ってね。
それにしても、地面が固まったら
どうなるんだろう?不思議よね。


仙太郎…何しているんだろう...




TVも詰まらないわねぇ、何か面白い事
無いのかしら?あ、そうだわ
「おーい!マーラー出てきなさい〜!」
ウルドは、庭に向かって大声で叫ぶ。
「おっかしいわねぇ…いつも偵察と称して...」
もう一度叫ぶ事にした。
「こらー!バカ・マーラー!出てこーい!」


冬の雨の静寂の中に、ガサゴソと音がして
庭先で小さくなっていたマーラーが、やおら顔を
出して来た。
「こらー!そこっ!こっちは密偵の身なんだゾ!
そんなに大声出すんじゃないっ!」
ポンッと元の姿に戻ったマーラーは、頭をポリポリと
掻きながら出てきた。
「ほぅら、居たっ 最初から出て来ればいいじゃないの」
ウルドがニヤニヤと笑いながら言うと
「だ か ら〜密偵だとあれほど…」
マーラーは説明するのを止めた。意味が無いと悟った。


「ヒマなんだからさ〜ちょっと話でもしていかない?」
「わたしは仕事中なんだぞ、サボると怖いお方が…」
そこまで言いかけて思った。そうか、ウルドはそのお方の
娘なんだ…まぁ、ここはひとつ、話を聞いてやっても
損じゃないだろう。
このまま雨に打たれながらの密偵も、身体に悪い気がする
更に言うなら、ウルドとの会話で、女神の弱点が見つかる
かも知れないしな、とマーラーは考えた。


「じゃあ…」と言う事で、マーラーはウルドの城に行った。


「ねぇアンタ、魔界の学校の事、覚えてる?」
「ああ、忘れられないね。いつもウルドにイジメられてたな」
「いやだわぁ〜あたしがいつイジメて…ああ、あれね」
「あれとは何だよっ!くっそー忌々しいなぁ」
「でも裏返せば、それも愛情表現だと思わない?」
「ああん?どう裏返せば、それを愛情表現だと言えるんだっ!」


「でも、楽しかったわねぇ...」
「ああ、それにはわたしも異論は無いな...」 





ふたりが思い出話に花を咲かせていた頃、螢一は途方に暮れて
部屋の中で天井をぼんやりと見詰めていた。
「この雨…明日には止むよな?天気予報じゃ…無理っぽいが」
部屋の中にあるモノクロのTVモニターでは
天気予報のキャスターが、にこやかに明日の天気を伝えていた。
「明日の関東地方は、雨でしょう」とキッパリ言った。


どうするんだ俺?明日はベルダンディーと…


「雨、止まないかなぁ...」





その頃、厨では明日の為のお弁当作りが最高潮に達していた。
「さぁ、これで仕上げねっ」
すでに出来上がっているお弁当に、最大限の思いを込めて
そして…大好きな螢一さんっに…
「・・・螢一さんっ・・・」
顔が心なしか火照ってくるのを抑え切れない。
「・・・愛してます・・・」


明日はきっと晴れるわっ だって、その為の今日の雨ですもの
ベルダンディーは、にこやかな笑みを浮かべた。



Rain Song


by belldan Goddess Life.