ああっ運命の前夜っ

「ふわぁぁぁ〜」
大きなあくびだ。もしかしたら、今なら何でも
飲み込めそうな気がする。
俺はコタツで、先輩に頼まれた自動車部のポスター
の案を考えていた。考えていたのだが、何も思い付かない。
「しかし先輩…何考えているんだ?」
バイクいじりなら得意なのだが、いかんせん、こう言う事は
ほんと門外漢だよなぁ...


「あ〜何も思い付かん・・・・」
タツのテーブルに顎をのせて、部屋を眺めてみる。
殺風景な部屋だなぁ、と思う。
関東の大学に進路が決まり、郷里の釧路から出て来た俺は
経済的な理由もあって、大学の寮へ入った。
必要最低限の荷物の中に、コタツがあるのは、そう言う事だ
つまり、北国生まれって事。
そんな話は、この際どうでも良いのだが...


「あ〜彼女、ほしいなぁ〜」
思わずつぶやく、このセリフ…本心だな、と俺は確信する。
さすが都会の大学で、可愛い女の子はたたくさんいる。
何人かに声を掛けたが、すべて軽くあしらわれてしまった。
手当たり次第って訳じゃない、ちゃんと理由もあるが
まぁ、それはいいか...


そんな事より、運命の女性(ひと)って本当に居るのかな?
この世界のどこかに、その人は存在して、俺を待ってる…
「って、そんな事は無い無い…」
自嘲してしまうよな。


そんな折、ドアがノックされ、屈強な漢(おとこ)どもの
声が響き渡る。
「お〜い、森里ー!出来たか?」
田宮先輩と、大滝先輩だ。
「あ・・・すみません。まだ・・・」
「なにおぅ!まだだとぉ!」
「森里くんっ!何をしてたんだね?」
二人の先輩は、口々に俺をせき立てる。


「すみません・・・」
俺はただただ謝るしかなかったが、そもそもの原因は
先輩方にあるのですが...と俺は思う。


「ペナルティを与える」と二人は言って、明日、寮の清掃と
留守中の電話番を仰せ付かった。
「しっかりやれよ!」
二人の激励の言葉には、痛み入りました。


「あ〜あ…明日は留守番かよ...」
とは言うものの、他に何もする事も無いので
用事が出来た事を、素直に喜べ俺、と自分に言い聞かせた。


そんな俺に、こんな出来事があるとは…





ああっ運命の前夜っ。



by belldan Goddess Life.