夢魔

これは夢、それも相当の悪夢だ。
「さよなら」彼女はそう言った。それも後姿で。
真っ赤な空へと飛翔していく女神さまっ でも
どうして?俺は何か彼女にとって、悪い事でも
したのか?と考えてみても何も分からない。
思考が撹乱する、視野がぼやけてくる、そして
彼女の姿がとこにも見当たらない。
「ま、待ってくれっ!俺は…俺は!」
声にならない言葉が、胃を刺激して吐き気がする。
「俺は…君の事が!」


突然、目の前に深淵の沼が現れる。
そこには天秤を持つ精霊が居て、俺に問いただす。
「あなたはバイクと、女神…どちらを取りますか?」
精霊の女は、天秤に乗せた、俺のバイクと彼女を
目の前に差し出した。
「その…どちらを取るって…?!」
彼は究極の選択を余儀なくされた...。



深夜に目が覚めてしまったベルダンディー
その理由を理解する。
最愛の人が、夢にうなされてるのだ。
「…螢一さんっ」
声をかけようとして、その思いを制御した。
声はかけれない…だって、悪い夢ならなおさらな事
その夢が現実の物となるかもしれないから。
彼女はとても心配そうに彼を見詰めていた。
「螢一さんっ…」



「さあ、どちらを選ぶか…決める時間です」
精霊の女は、妖艶に微笑む。
本当にどちらかを選ばなきゃならないのか?
もしかしたら、これは何かの暗喩なのだろうか?
どちらを選んでも、すべては無に帰るのか?
そんな事より、時間が無い…時間が無いんだ。


自分にとって、一番かけがえのない存在は
どちらなんだろう?
もしここで間違えてしまっても、やり直しは
出来るのだろうか?
それどころか、どんな答えを出しても
俺は、この精霊の女の住む沼に引き込まれるのでは
ないだろうか?


「俺は!・・・」




by belldan Goddess Life.