Rhapsody in St.Valentin’s day #2

ベルダンディースクルドは、息を切らせて
階段を登り、正門の前に到着した。
注意深く辺りを警戒し、正門から入るとそこには...


夥しい数のプレゼントが整然と積み上げられていた。
「これは…いったい?」
「ああ〜お姉さまっ!ペイオースがいるわよっ!」
本堂から脇へ、母屋に向かう途中の垣根のそばには
ペイオースと螢一が、何処から出して来たのだろうか
長テーブルを置いて、受付を行っていた。
そして、驚くべき事には、受付を待っている者が
全て天上界にいるべき女神たちであった。


「け、螢一さんっ!これはいったい…?」
「あ、あはは…俺も困っているんだよ」
「ペイオース、これはどう言う事ですか?」
「あら、お帰りなさい ベルダンディー
「ちょ、ちょっと!ちゃんと説明しなさいよっ!」
スクルドも事の次第に、慌てて口を挟んで来た。


冷静にならなきゃ…ベルダンディーは、まず深呼吸を
して、周囲を見渡した。
魔属の画策ではない、それにしても天上界の女神たちの
意識が尋常ではなかった。
かなり興奮している者もいるし、まるでバーゲンセール
に並んでいるかのような感覚で、それ自体を楽しんで
いる者もいた。
並んでいる女神たちは、それぞれにプレゼントを持ち
甘い芳香を漂わせていた。


その匂いの元は、たしかにチョコレートであった。


「ペイオース、説明してくれますか?」
冷静になったベルダンディーは、事の次第を尋ねた。



それは、ある書物が発端となっていた。
書物と言っても、ペイオースが地上界から帰還する際に
お土産と称して持ち帰った雑誌”どぼん”に掲載していた
ある少女漫画の物語が、天上界の女神たちに、やたらと
ウケてしまった事がそもそもの原因だ。
天上界で、色々と根掘り葉掘り問い正されて辟易した
ペイオースは、「それじゃあ」と言う事で、現地へ赴いて
実状を知って貰いましょうと考え、行動に出たのである。


「これでも、かなりの人数を制限したんですのよ?」
とペイオースは言うが、それでも100人位の女神たちが
今か今かと待ち受けているのである。
しかもプレゼント用のチョコレートの数は、それの数倍
いや、100倍位はあった。
さながら境内は、チョコレート工場から出荷されるのを
待つチョコレート倉庫のようだ。
天上界の女神たちが全員参加を希望したのだが、それでは
仕事に支障をきたすと判断し、選ばれた100人が降臨
と相成った訳である。


列に並んだ女神たちから、感嘆の声が漏れてくる。
「ステキよねぇ〜好きな人に、告白出来る日があるって!」
「そうよね〜ああっ憧れちゃうわよねっ!」
「こんなイベント、天上界では無いものねっ!」
「ああっワクテカが止まらないわっ!」



そのイベントの中心人物、言うなれば主人公と言うべき
森里螢一は、実際辟易していた。
「なんでこんな事に…」
彼は、密かな期待に胸を膨らませて、この日を待っていた。
その期待とは、当然愛するベルダンディーからのチョコだ。
ただでさえ騒がしい森里家である、ウルドやスクルド
目を盗んで、ふたりだけで…そんな淡い思いも消えて
今や、イベントの中心人部として活動するしか、彼に
すべき事はなかった。


「け、螢一さんっ 大丈夫ですか!?」
螢一の顔色が宜しくない、それは当然の摂理で
ベルダンディー達がお買い物へ行ったきり、彼は
何も口にしてなかった。
「ああ、大丈夫だよ。ちょっと腹が減ってるだけ…」
そう言って作り笑いをした彼だが、少し眩暈がして来た。


気を取り直して彼は
「みんな、君の仲間なんだよね?嬉しいよ、来てくれて」
「それは、そうですが…」
「ちょっと驚いたけど、でも、うん、大丈夫さ」
「螢一さんっ…」
ベルダンディーは、とにかく彼に何かを食べさせなきゃと
急いで厨へ足を走らせた。



Rhapsody in St.Valentin's day #2



by belldan Goddess Life.




 *** *** *** ***


あ〜長いよ〜終わらないよ〜(泣)