小さな春/ハルうらら

 小さな春を見つけた?


「早く早く〜!」
その小さな手のひらは、高く掲げられて
俺達を誘う。早春のある日、風の気持ち良い日。
お寺の境内にも、一足早い春の予感が来て
色取り取りの花が、そこかしこと、その蕾を
勇気を持って開こうとしていた。


そんなある日、先日、パパとママが公園で
楽しいひと時を過ごしたのを知って
マリアベルも、その気持ちを知りたいと
公園に出掛けようと、ふたりを催促したのだった。


梅の花、桃の花、そして桜の花は、まだこれから
まるで季節という時間が、眼前にダイナミックに
展開して行くような、そんな気持ちにさせてくれる
小路を、三人がそぞろ歩いて行く。
ハラリと落ちている、梅の花びらを拾ったり
春の予感を告げる、鳥達の声を聞いたりしながら。


「そろそろお昼にしようか」
螢一は、少しはしゃぎ過ぎのマリアベルに言った。
「うんっ! ねえ、ママ?」
「ええ、ちゃんと持って来てますよ」
ベルダンディーは、にこやかに微笑み、最近彼女の
お気に入りのミルクセーキを容れた魔法瓶を指差し
「ほら、ここに入ってますよ」
と言った。


お昼には、それぞれの好きな物をランチボックスに
容れて、それでマリアベルは、イチゴのサンドイッチ
螢一とベルダンディーは、BLTサンドだ。
お昼ごはんを食べるのに最適な場所を選んで、そこに
マットを敷いた。
小さな食堂の完成だ。


ハルうらら、午後の風に冬とは違う空気が含まれて
命が躍動感を感じるのだろう。
冷たい風を耐えて、その小さな蕾たちは
春を待ち焦がれて来た。
しかし外界は、まだ厳しく寒く、冷たい風も吹くだろう
それでも勇気を持って、その花弁を開こうとする姿に
人々は、感嘆の息を漏らす。


お腹がくちると、眠くなるのは自然の理だ。
ベルダンディー膝の上で、イジイジとしていた彼女は
そのまま、眠ってしまった。
「あらあら…」
ベルダンディーの、その嬉しそうな笑みを見ながら
螢一も、自然と微笑んでいた。


「今度、桜の花の咲く頃に、また来ようね」
「ええ、そうしましょう」
その時は、桜色をした君の笑顔も一緒だね。


小さな手を、大きく掲げて。



 小さな春/ハルうらら


by belldan Goddess Life.



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