Help me!

「じゃあ、行ってきます」
笑顔で店を出て行ったベルダンディー
千尋さんのお使いで、ちょっと買い物に出掛けた
訳なのだが、その千尋さんの様子がおかしい。


「あのぅ…千尋さん?」
俺は声をかけてみた。
しかし返事が無い。
千尋さん?」
「んあ?あによ?」
千尋さんの顔を見ると、どうやら酔っているらしい。
そう言えば、先日たずねて来たウルドがお土産と称して
お酒を置いていったのを思い出した。
まさかその酒に、ウルドのやつ…変な薬を混ぜたんじゃ
ないだろうな?
俺は訝しげに千尋さんの顔を、もう一度伺った。


完全に酔ってます。


どうしたもんだろうと、頭を抱えたが、それにしても
グラスの1杯や2杯で、千尋さんがしたたかに酔うのも
おかしい話で、やはりウルドの、変な薬の混入説は
否定したくても出来ない状況になってきた。
ただ単に酒に酔っているのなら、話は早い。
このまま倉庫で、安らかな眠りに付いてくれると有難い。
しかし、しかしだな、ウルドの薬の副作用なら
ベルダンディーの帰りを待ち、しかるべく処置を行わないと
どうなってしまうのか、気が気じゃない。


とにかく、ここは穏便にして頂こうと俺は提案をした。
千尋さん、ちょっと休んでください 俺が店番をして
おきますから」
と彼女に伝えたら
「あに言ってるのよっ!あたしは酔ってないもんっ!」
と、あきらかにロレツが回らない口で返事が返ってきた。


ベルダンディーっ!早く帰って来てくれっ!と俺は
心の中で祈ってみたが、こればかりは時間が経たないと
成就しないように思えてきた。
いや待てよ?家に電話をかけて、張本人のウルドを呼び出し
この状況を正常化をしてくれと言うのはどうだろうか?
だがしかし、この状況下でウルドを呼び出すのは
火に油を注ぐような愚行ではないのか?
いやむしろ、暴挙なのかもしれないな、と俺は思った。


あれこれと思案をしている俺に、千尋さんが話をし出した。
「ねぇ森里君?君は、どう考えているの?」
いきなりの質問に、しかも主旨を、と言うか主語をいきなり
カットした千尋さんの言葉に窮する俺。
「あ、えっと…」
「ほらほらほら!そうして誤魔化すんだからっ!」
「すみません…もう一度、言ってもらえませんか?」
千尋さんは、勝ち誇った顔をして
「ええ、良いわよっ ベルちゃんと、どこまで行ったの?
ってそう言う事よっ!」
「どこまでって…ああ!ほら、この間、千尋さんも一緒に…」
「なに言ってるのよっ!場所とか距離とかじゃないって!」
「あ…えっと…その、あの…ええっ?」
ますます混乱する俺は、その主旨の分からない質問に対する
興味深い答えを見つけれずにいた。


「んもぅ!まるで小学生のようだわねぇ…ふふっ」
意味深な笑みを浮かべる千尋さん
「あのさ…もしかして、知らないの?そんな訳ないわよね?」
さらに言葉を続ける
「何ならお姉さんが教えてあげましょうか?うふふ…」


「えええっ!」
何か知らないが、俺はとてつもなくヤバイ感じを覚える。
背中にヒヤリとした感触、間違い無く冷や汗だ。


「あんなにステキな恋人がいて、アレも知らないなんて
この先、ベルちゃんと結婚したら、どうするのよ?」
ん?何だ?俺は、先の話の主旨がだんだん見えてきた。
要するにだ、千尋さんは、俺とベルダンディーが、その
いわゆる”子作り”を知っている、或いはしているのか
それを危惧して、老婆心を出したのだ。


「も、もちろん知ってますよ!あ、あはははははは...」


「あら、残念ねぇ」


「え?」


「残念ねぇ」と言う言葉を告げると、千尋さんは嘘のように
眠ってしまった。
まるで魔法が解けるように。


「ウルドのやつ…」
俺はこの状況の結果を、どう言う風にベルダンディーに説明
すれば良いのかを考えて、ちょっと眩暈がした。


「ただいま戻りました〜♪ あら?」



 お買い物。



by belldan Goddess Life.