風を待って

縁側で座って、物思いに耽ると
目の前を通り過ぎる風の音が、とても
心地よい事に気がつく。
目を瞑り、耳に神経を集中させて
聴いてみよう。


たくさんの音が聞こえてくる
それは愛すべき生活の音、そして
君の歌声だ。


遠くから金属音も聞こえてくる
きっとどこかの工場から、風に乗って
聞こえて来るんだろう。
何を作っているんだろうか、と考えては
面白い発想が浮かびそうで、ひとり笑っていた。


そして君の歌が聞こえてくる。


その声、その旋律は、優しさに満ちていて
俺の心を、優しく包んでくれる。
まるで、揺り篭のようだなって思うと
「じゃあ、俺って赤ちゃんか?」
ひとり突っ込みをしている俺がいる。


目を閉じて、たくさんの音の余韻にひたって
そのまま眠ってしまうのも悪くはない。




風の中に歌がある。
私は、いつもそれを見つけて、そして受け取る。
冬の季節に芽生えた命は、春を呼び、風を起し
歌を届けてくれる。
風を待って
風を待って
その思いを綴りましょうか。


小さな小瓶に詰めた、優しさのお裾分け
そっと紅茶の中に入れてみました。
巡り来る季節と、その思いと、私の愛と
あなたに届いてほしいと、願いながら。


「螢一さんっ お茶が入りましたっ」
あら?どうしたのかしら?お返事がないわ?
厨から廊下へ出て、縁側を覗いてみた。
「あらまぁ…うふふ」
螢一さんっが、座布団を枕にして眠っている。


螢一さんっも、きっと春の風に誘われたのでしょう
それとも
風が運んで来た、子守唄を聞いたのでしょうか
可愛い寝顔を見せてくれて、ありがとう螢一さんっ。



 風を待って。


by belldan Goddess Life.