It’s a Sin to Tell a Lie

気紛れな風が吹く時、もしかしたらって思う時
空にひとかたまりの墨を落とした様な雲が
切なくさせる、その冷気を感じさせる予感が
当たらないでほしいと、そう願う。


「雨が降りそうだね...」
螢一は、空を見上げ、憂鬱な気分になった。
少し遠出した帰り道に、降られるとはツイてないな
そんな気持ちが言葉になってしまう。
「大丈夫だと思うのですが・・・」
心配そうに螢一を見つめる瞳に、曇天の空が映る。
あんなにお願いしたのに、どうして?と思う気持ちが
声に出てしまった。
やがて、その小さな水達は、大勢の仲間を引き連れて
空から降り落ちてきた。


まさに、大量の水を入れてたバケツが引っくり返って
しまった・・・その表現がピッタリ当てはまるような雨は
雨宿りする場所を探す余裕も与えず、ふたりの上から
容赦無く降り注がれた。


早く雨宿りする場所を見つけないと、そう思うのだが
気持ちは焦るばかりで。
やっと見つけたバス停に、その身を隠したのだが
時すでに遅し、ふたりの身体は水浸しになっていた。


ああ、ツイてないなと螢一は思い
お願いしたのに、どうして?と悲しくなる彼女は
羨む様に空を睨んだ。
本当は、こんな日じゃなかったのに
本当は、とても素敵な一日で始まり、そして終わる。
そんな簡単な事が、通り雨にかき消されたなんて
笑い話にもならないよ、と螢一は思う。そして
傍にいるベルダンディーにも、やさしい言葉を
かける気にもならなかった。


沈黙の中、ふたりのシルエットが沈んでいった。


by belldan Godess Life.