I’m only sleeping...

朝晩と日中の温度差のせいなのだろうか
とにかく昼間に睡魔が襲ってきて、如何し様も
無い状態が、ここの所続くのだ。
気温に敏感、それは自然界の掟に従う猫にとって
もっとも重要な事なのである。
「くわぁ〜」と大口を開けてアクビをすると
縁側で日差しが差し込む場所が、シェスタを誘う。
重い足取りで、そこまで向かい、肢体を伸ばし
そのままゴロリと横になると、春の陽気に誘われた
天使の歌声が聞こえてきそうだ。
もっともオレは、元魔属なのだが、まぁ、それは
良いか...


心地良い眠りは、最大の幸福だと思う。
ここ地上界に来て以来、そんな素晴らしい眠りには
事欠かないが、やはり春の日差しは格別だ。
体から重力が感じられなくなる、それはすなわち
眠りの瞬間、至福の時だ。


I'm only sleeping


「あ、ヴェルスパーったら、お昼寝してるわぁ」
厨からアイスクリームを持ち出して、お気に入りの
キャラメル・ソースをかけて食べようとスクルド
自室へ向かう所で、猫を発見した。
「ふ…」と、何かを思い付いたみたいだが、そのまま
踵を返して自室へ入っていった。


「へぇ〜気持ち良さそうだわねぇ」
またまた厨から、冷やしてたての冷酒を小脇に
ウルド姉さんが、猫を発見した。
「ブッ…」と、何かを思い出し笑いしたが
笑い声を押し殺して、そのまま自室へ向かった。


日差しがだんだん下がってくる、それはそのまま
日没の時刻が来たと言う証拠だ。
ヴェルスパーは、それに伴って自身の身体を下げて
とうとう柱まで到着した。
その姿は、まるで柱にすがっているようだ。


「ただいま戻りました〜」「ただいま〜」
ベルダンディーと螢一が帰宅して来た。
玄関先から、靴を脱ぎ、何気なく縁側を覗くと
妙な格好で寝息を立てている猫を発見した。
「わっ…」「あらあら…まぁ」
その姿を見て、ふたりは見詰め合い微笑んで
最後には、大笑いをしてしまう。
「ヴ、ヴェルスパー!何やってるんだい?」
「ご、ごめんなさい…でも、だって…」


I'm only sleeping


オレはただ、寝てただけなんだが...



春爛漫。

by belldan Goddess Life.