Ask,and it shall be given you.

あれから1年過ぎた。
どうして俺は、ここ他力本願寺に居るのか
そして、どういう経緯で大学5年生で
自動車部の先輩である、藤見 千尋さんの店
ワールウインドで働く事になったのか
それを今更問うには時間が経過し過ぎていた。


季節は巡る、それは紛れもない自然の鼓動のように
ただ享受する、その平凡な日々を。
殊更季節に敏感になるのは、やっぱりバイクを
走らせている時が多い。風の中にある季節の香り
とでも言うのだろうか、懐かしくもあり、鮮烈な
記憶の中にある、意味不明な思い出と言えば
良いのだろうか…
これを人に理解して貰おうとは思わないが
だがバイク乗り特有の感覚、と思って貰っても
構わないと思った。


そんな事を毎日考えている訳ではないが
それでも仕事の合間だとか、大学の講義の後とか
ふと時間が空いた時には、思い返してみてる。
春、それは始まりの季節だ。そして俺も何かが
始まろうとしている予感に、それは先のコーナー
が手に取るように分かる感覚に近いかもしれない。


一瞬の未来が見える…のかも知れない。


未来と言えば、とても気になる人がいる。
いつだったか、この寺を観光にきた女性だ。
その人は、最近ちょくちょく顔出してくれる。
見た目は外国人、それも北欧系なのだが、とても
流暢な日本語を話してくれるので、会話が助かる。
名前は、リンド…フルネームを聞くのを忘れて
今更聞くのも失礼だと思い、そのままだ。
仕事が、そして大学が休みの時、それもひとりで
寺の母屋で、バイクのメンテナンスをしている時に
尋ねて来る。別に数えた訳じゃない。


何気ない日常に、その時間だけが鮮明になる。
その人の名は、リンド。彼女が尋ねて来る。
今日がその日だ。


「こんにちは、森里螢一くん」


一陣の風が舞った。空気が変わる。それは
煌くような光があふれてくると言う感覚だ。
特に話をする訳でもないのだけど、どうして
なんだろうか、気持ちが通じると言うのか
本当に違和感がなくて、それについては
以前は驚いてた自分が居たが、今では…
そう、今では、まるでそこに居て当然のよう
それが自然のような。


横顔をじっと眺めていた。
「ん?」
「あ、いや…何でも…」
「そうか…」


何だろう、それはいつも思う疑問でもある。
聞きたい事はたくさんあるのだが、何を聞けば
一番良いのか、それすらも分からずにいる。


Ask,and it shall be given you.


例えば「君は女神さまっ?」だとか
そんな事を聞けば良いのだろうか。
一笑されてしまうか、それとも女性への賛美の
言葉として受け取ってくれるか。


まさに”神のみぞ 知る”だよな。



その後のその後 その3


by belldan Goddess Life.



これは
2006年8月4日の、その後のその後 その2
の続きみたいなものです。