扉を開いて

強固な防壁を突破しようと、あらゆる手を尽くしたが
現状では困難だと判断したウルドは、おもむろに受話器を
取り、天上界へ連絡を取るのだった。
「もしもし〜ペイオースはいるかしら?」
「あ…ウルド…あのその…何の御用でしょうか?」
オペレータのひとりが、言い難そうに答えた。
「ちょっと!早く繋いでちょうだいっ!」
待つ事数分、程なくしてペイオースが受話器に出た。
「あら、お久しぶりだこと…何の御用かしら?」
何時もながらの鷹揚な態度に辟易するウルドだが
そう文句も言ってられない。
「あのさ〜聞きたい事があるんだけど」
「珍しい事ですわねぇ…あなたが何かを尋ねるなんて」
「いいじゃない、別に…」
「それで…聞きたい事って、何ですか?」


ウルドは事の次第を話し出した。


「…つまり、ウルドは窮している訳ですね」
「そうよっ」
「その理由が、その…あなた自身にある事は理解していて?」
「へっ?」
「だって、あなたが言い出したのでしょう?ダイエットする事
それにベルダンディーは協力しているだけじゃないですか?」
「…う、それはそうとも言えるわね」
「言えるじゃなくて、全てあなたの事を思っての事だと思うの
多分ベルダンディーは、全力で協力すべく結界をはっていると
思うし、その結界を破る事なんて、天上界でも無理ですわよ」
今更ながら、妹であるベルダンディーの力を思い知ったウルド
それでも何とかしようと、ペイオースに食い下がる。
「その無理を承知で言っているのよ、何か良い案を無いかしら
ペイオースなら、何とか出来るんじゃないかと思ったから」
「わたくし…がですか?」
「だって、ベルンダンディーと唯一タメを張れるのはあんた
だけだと思うのよねぇ…」
「そ、そりゃ…わたくしだって、彼女に引けを取りませんわ」
「でしょ?ひょっとしたら、あんたの方が上かも?」
しばらく沈黙が続いた。これは脈あり?とウルドはほくそ笑む
そして、ペイオースに言葉を続けた。
「ねぇ、暇ならちょっと地上界へ遊びに来ない?」
「そう、ですわねぇ…」


それからまた沈黙があったのだが、程なくして
「分かりました、そう言う事でしたら参りましょう」
ペイオースは、とても事務的に答えた。
「良かった!じゃ、待ってるわよん!」
じゃーねー、と軽い口調で受話器を置いたウルドの顔は
古今東西の策士のそれと同じ表情をしていた。



扉を開いて。


by belldan Goddess Life.


次回 策士、策に溺れる。



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だんだん雲行きが怪しくなってきました、色々な意味で(笑)