迷宮の掟

それは、奇跡なんだ。本来はそう言うのだけど
この街、この他力本願寺の境内では、言うなれば
日常茶飯事な出来事として、天上界から女神が
降臨する事を、朝飯前的感覚で受け止めている。


ごきげんよう〜」
真紅の薔薇を撒き散らしながら、ペイオースが
ゲートから出て来た。
光のゲートは、程なくして空中に消えて行く。
それからペイオースは、しばし沈黙、そして
周囲を見渡し、溜息を付いた。
「どうやら今回も、お出迎えは無いのですわね」
はぁ〜と表情を曇らせ、やっぱり来るのでは
無かったですわ、と呟いた。
綺麗に清掃されている庭、これはベルダンディー
の所作ですわね、思えば地上界は、とても埃っぽい
ですし、波動も良くない所ばかりですもの。
だけど、ここは、そう、このお寺の中だけは違う
やはりノルン三姉妹が滞在しているだけの事は
ありますわね。


そんな事を思いながら、ペイオースは以前自分が
ここにいて、それは長いヴァカンスだったけど
とても楽しめたのを嬉しく思い出していた。


「ペイオース!ちょっと!こっちよ!」
母屋の裏からウルドの声が聞こえて来た。
声のする方にペイオースが顔を向けると、ニヤリと
笑い顔のウルドが手招きしているのだった。
相変わらずの対応に、少し辟易するのだが
ペイオースは、さすがに1級神である、うろたえる事
もなく、招待したウルドの方へ歩みを進めた。


それから二人は、縁側からウルドの部屋に向かった。
それはまるで人目を避けるようにして...




「あら?」
不思議に思って、ベルダンディーは庭に出た。
「確かに神属の気配が…」
「どうしたの?ベルダンディー?」
後から螢一も彼女を追って庭に出て来た。
「あ、螢一さんっ…神属の気配を感じたんですが・・・」
「へぇ?お客さんかな?もしかしてペイオースだったり?」
「そうかも知れませんね!後でウルド姉さんに聞きますね」
「それが良いと思うよ」
「はいっ」


ベルダンディーは、ウルドの為に淹れたダイエット・ティを
持ってウルドの部屋の前に立ち
「姉さん、お茶を持ってきたわ 入りますね」
そう言って部屋の襖を開けた。


「あら、ごきげんようベルダンディーさん」
「やっぱり!螢一さんっの言ってた通りだわっ!」
「何の事かしら?」
「あ、挨拶がまだでしたね、こんにちはペイオース」
「ちょっと!社交辞令はいいからっ!」
ウルドはちょっとご立腹だ。
「姉さん、お茶を入れてきましたよっ」
ベルダンディーは、テーブルにカップをのせて
「体にも良いそうなので、召し上がってくださいね」
と言った。
それを見て、ウルドは苦虫をつぶしたような表情で
「ね?ペイオース…これを見てよ!」
と差し出されたお茶を、苦々しく見た。
「お茶?それがどうかして?」
ペイオースは、概略しか聞いてないので、良く分からず
「わたくしにも?それはありがとうございます」
そう言って、ベルダンディーに微笑を返した。


「あのね、あたしが飲みたいのはお酒、お・さ・け!」
もう、毎日毎日、こんな苦いお茶だけしか飲めないなんて
我慢できないわよ!と声を荒げるウルドだった。
「聞けば、あなたが言い出した事なんでしたわよね?」
冷静にペイオースはウルドに対応する。
「姉を思う、可愛い妹さんの愛情ですもの、受けとらない
って事は、あまりにもかわいそうだと思いますわよ?」
「うっさいわねぇ!ほっといてよ!」
ウルドは、またまた窮するのだが、ふとペイオースの肢体を
見やり、思わずニヤリとした。
「ところでさ、あんたもダイエットする必要があるじゃない
かな?とくに下腹部?」
ペイオースの神衣は、少々大胆で、色々露呈している部分が
多過ぎる位だ。
「ななななな…なんですって!」
思わず自身の下腹部を手で覆いながらペイオースは
「し、失礼じゃありません事?ウルドさんっ!」
ウルドをキッと睨んだ。


毒を食らわば皿までも…ではないが、こうなったらペイオース
も巻き込んでしまおうと、作戦変更をしたウルドであった。



次回、神々の宴。


by belldan Goddess Life.


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完全に迷宮で迷子になっちゃった…たすけてドラえm(ry