神々の宴

他力本願寺の母屋には、見目麗しい女神さまっが居る。
それも三人もだ。そして今回は、新たな女神さまっの
降臨もあって、場内は騒然としていた。


「わわわ、わたくしにもダイエットですって!」
藪から棒にそんな事を言われ、腹立たしいやら情けない
やらのペイオースは、ワナワナと震える手を上げて
今まさにウルドの頭上へと法術を展開しようとした
その時であった。
「あ、ベルダンディー ここにいたんだ」
その呑気な声の持ち主は、森里家の主である螢一だった。


女神三人が、やたら怪しいウルドの部屋にて密談中か?
そんな感じも否めなくはないが、それも日常茶飯事の事
螢一は、何事も気にする事もなく、臆面にも出さずに
「あれ?やっぱりペイオースだったのか!」
と、挨拶も忘れて、自分のカンに感心しながら言った。
「あら、ごきげんよう、森里さんっ」
展開しようとしていた法術を解き、淑女の面持ちで
ペイオースは螢一に挨拶をする。
「うん、久しぶりだよね?こんにちは!」
そう言って、笑顔で彼女を出迎える。


「螢一さんっ 実はペイオースも参加するんですよっ!」
ベルダンディーは楽しくてしょうがないって感じで
「ダイエットです!たくさん仲間が出来ましたっ!」
本当に、楽しくてしょうがないって感じだし。
「そ、そうなのか? へ、へぇ…そうなんだ…」
螢一は、とても不思議そうな顔をして
「じゃ、がんばってね」とペイオースに向かって言った。
それから螢一は、ベルダンディー
「そうそう、今晩の夕食は…その、なんだろうって…」
女神さまっがこぞってダイエットするのを尻目に、自分だけ
食事の話をするのって、どうなんだろうと思いながら
それでも自身の食欲を満たすのも、大事な事だと考えて
あえて、と言うか、もう少しTPOをわきまえなきゃ、と
思いつつも、言ってしまった。


後悔後に立たず、とは言ったもので、それを聞いたウルドは
「ちょっと螢一っ!あんただけ、ズルいわよっ?」
とても悔しそうな表情のウルドだった。
「へっ?何で?」と、螢一はとぼけた。それが良くなかった。
「アンタも参加しなさいっ!これは最優先事項よっ!」
「お、俺もか?」


「そうよっ!」「それが礼儀ってものだと!」「わぁー!」
三人の女神さまっ達は、それぞれに肯定して来る。
最後の「わぁー!」は、当然ベルダンディーの声だが
マジ本当に楽しそうに微笑んでいた。
「螢一さんっも参加してくださるんですねっ!では…」
「では?」
螢一は、恐る恐る尋ねた。
「はいっ!今夜から、スペシャル・ダイエット・メニューに
変更しちゃいますねっ!私、がんばりますねっ!」
と、腕まくりしながら、と言うか実際はしてないが
そんな勢いで、ベルダンディーは台所へ向かった。


「あああ…ど、どうしてくれるんだっ!」
螢一は、怒りの矛先を、当然ウルドへと向ける。
「何言ってるよ?こう言う事は、一蓮托生と言うじゃない?
あ、違うか…運命共同体宇宙船地球号?あれあれ?」
ウルドは、したり顔で言う。
全部微妙な意味だが、要するに、全員参加せよと
暗に言っているのだ。


ふとペイオースを見ると、呼ばれた理由も忘れて
ダイエットにやる気をみせているし、今ここに居ない
スクルドも、螢一自身の言った言葉が火付けとなって
彼女のやる気もモリモリと増していた。


今宵、神々の宴(女神さまっ4人と人間1人)は、過酷な
ダイエット・フードが卓に並べられ、それはそれは豪奢な
晩餐となるのだろうか。
螢一は、そんな事を考えて、何時ものように途方に暮れた。



次回、ダイエット大作戦。


by belldan Goddess Life.



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多分、次が最終回(予定)