ダイエット大作戦(完)

それは、ひょんな事から始まった。
言い出しっぺのウルドは、そんな事、言ってない
と主張するのだが、天上界からペイオースまでも
引っ張り出しての工作に、どう言い訳するのだ?


本来、女神さまっにはダイエットなんぞ必要ない。
それは初めから分かっている事なのだが
勝負事として捉えられた、或いは何かの罰ゲームの
相を呈しているかのようなダイエット大作戦は
ここに開幕の声を掲げたのだった。


「とにかくっ!ここにダイエット大作戦の声明を
発表しますっ!」とウルドは声高らかに言う。
「つきましては、各々の目標に辿り着くべく奔走し
見事達成されたい所存でっす!」
ウルドの開幕声明に、一同力無く「おー!」と声を
出したのだが、約1名は、とても楽しそうに
「はぁ〜い!がんばりましょーねっ!」と、それは
それは、体育祭のような、はしゃぎ様だ。
もちろんその声の主は、ベルダンディーだが、さて
彼女、どういう目標で、参加するのだろう。
森里 螢一は、それとなく聞いてみた。
「ね、ねぇ…ベルダンディー?あ、あのさ…ちょっと
聞きたいんだけど、さ」
と尋ねるのだが、肝心の要点を上手く言い出せない。
まさか本人を前にして、どこか太ったの?とか
気になる所があるのかい?とか聞けやしない。
それに、どこをどう見ても、いつもと変わらぬ美しさ
その見目麗しい御姿は、ダイエットの辞書には掲載
されてないと思う。
「はいっ螢一さんっ?何でしょうか?」
始終にこやかな笑顔を絶やさぬベルダンディーの顔を
見ながら、やっぱり聞くべきじゃない、と改めて思う。


スクルドを見ると、真剣そのものだった。手にはいつも
愛読している『花とうめ』があって、そこに秘訣が
掲載されているのかしら?と訝るが、詳細は不明だ。
きっと、夏だから、彼をトリコにしよー、とか書いて
あるのだろうな、と考えて、その考えを止めた。
非常に疲れそうな、そのタイトルには興味が湧かない。


言い出しっぺのウルドは、これまたやる気満載で
ハイパワーエンジンを搭載したマッチョなアメリカン
レーサーのような感じだ。
「いい汗かいてこそ、酒が美味いってものよねっ!」
と息巻いている。
たしかそれって、以前ワールウインドの千尋さんが
言っていた事に似ている、と言うか、そっくりだ。


ペイオースは、何やら腹巻のような物を腹部に装着して
具合を確かめている。
「これは女神モールで、以前購入したものですのよ」
と自慢げに言って、その後
「わたくしには、必要ないと思っていたのですが…」
心細げに言葉を続けた。


「ところでさ、あんたは?」
ウルドが螢一に尋ねて来た。
「お、俺かい? えっと、街の公園までジョギングでも
しようかなーと…思ってる」
「へぇ…」
ウルドは興味なさそうに返事を返した。
だったら聞くなよ、と思うのだが、振り返ると
勝利の女神さまっ、そう、ベルダンディーが微笑んでいた。
とにかく、がんばるか、と気持ちを切り替えた。


「よーし!じゃあ、スタートしようか!」と螢一
「よっしゃー!」とウルド
「負けないわよ〜!」とスクルド
「見て御覧なさいな!」とペイオース


「みんな!がんばってくださいねっ!私もがんばりますね!」
最後にベルダンディーは、みんなを応援し、彼女自身も
螢一に随伴して走りだすと言う。
まぁ、ジョギング組みは、螢一とベルダンディーだけなんだが
他の者は、それぞれのダイエットプログラムを組んでの参加と
なる。有体に言って、個人主義的参加なんだが、それが自由と
言うものだろうか。


お寺の正門を抜け、舗装された正面道路に足が踊る。
とにかく慌てないで、楽しむべきだと思った。
息が弾む、そのリズムが心地良い。
そして、傍には女神さまっがいる。
俺の大切な、ベルダンディーがいるんだ、と螢一は思う。


心が軽くなる、心がシェイプして行くように感じる。
これでダイエットが、成功へと動き出したのだと思った。



走りながら、ベルダンディーは螢一に囁いた。
「ダイエットのご褒美、何が良いですか?」
「え?あ…何でも良いよ」
「ふふっ 楽しみにしていてくださいねっ」
そう言って、ベルダンディーは楽しそうに笑った。



ダイエット大作戦(完)


by belldan Goddess Life.



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いつも朗らかで楽しそうな女神ベルダンディー
楽しさを発見する名人ですよね。
ダイエットのその後は、各人の想像に一任しますね(笑)
これで、この話は一応終わりです。
色々と突っ込み所は満載だと思いますが、ご了承くだされ...
ともあれ
読んでくださった方々、ありがとうございました。