突然の雨にやられて

自転車は裏門から出て、正門へ回り
表通りに出る。行きは坂を降りるので
幾分楽なんだが、帰りがなぁ〜と螢一は
溜息を付いた。それでも空は快晴に近い
青空で、まばらな雲の白と空の青さが
とても心地良く感じられた。
「よしっ 行くか!」
おもむろにペダルを漕ぐと、自転車のタイヤは
地面の上を滑るようにして動き出す。
風を感じる時速には、まだ到達してないが
それでも予感は、嫌でも心を急かすのだ。
ペダルを漕ぐ脚力と、坂の勾配でみるみる
スピードは増して行った。


空気圧も正常値、どこからも変な異音は聞こえない
当たり前だよ、俺が整備しているんだから、と
螢一はほくそ笑んだ。
バイクで走り慣れた山坂道でも、こうして自転車で
走ると、周りの風景が違うように感じられる。
いつもはヘルメット越しの風景、そして風をきる
音は、バイクの排気音と共にデュエットするのだが
今はただ、直に風を感じ、音を捉え、そして自然の
匂いを堪能している。


気持ち良いな、と螢一は思った。


遠くの空で閃光が見える。落雷の音はまだ聞こえず
眼前の空は未だに青と白のコントラストだ。
「まだ大丈夫さ」そう自分に言い聞かせると
螢一は自転車のペダルに力を注いだ。
現時点は、ちょうどお寺と麓の中間地点だ。後少し
後少しと思って、距離を稼ごうとした。
西の空からは、見る見る雷雲が、その姿を見せて
今まさに、空を我がものとしようと目論んでいる。
ポツリ、ポツリと道路に黒いシミの跡が出来ると
その雷雲からの飛来物は、その勢力を上げて来た。


ザァー…その後、轟音とも言える音がして
坂道はまるで急流のような川になって行った。
「やばいっ はやく雨宿りしないと…」
気持ちが焦る螢一は、スピードを徐々に緩めて
どこか非難できる場所はないかと探した。
しかし山坂道なので、気の利いた軒下などなく
山肌に沿って少々大きめな木の枝が
道路へと伸びているだけだ。
その時、ちょうどエスケープゾーンを見つけ
その場所にある木陰へと、自転車を向けた時に
前のタイヤに違和感を感じた。
「えっ!?」
まさかパンク?出発前には問題なかったはずだ。
その瞬間、前輪は地面を横滑りして、雨に膜に
乗り、運転手のコントロール制御下から開放されて
転倒を余儀無くされる。
とっさに自転車のハンドルから手を離し、危険を
回避しようとしたのだが、螢一も自転車同様に
横滑りしながら転倒してしまった。


雨は、ますますその勢力を伸ばして、彼と、その
自転車の上に降り注いでいった。




次回、雨の日の魔法。


by belldan Goddess Life.


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ああっ女神さまっ」2次創作に見えない(泣)