未来へ 思い込めて。

 寒暖が目まぐるしく変わる日々に
仙太郎とふたり、何となくだけど商店街を歩いて
ウインドーショッピングしたり、アイスクリームを
食べたり、まるでデートのようだわって思うと
顔に出ちゃうから、あんまり考えないようにしようっと。


「ねぇ、スクルドトランスフォーマーって知ってる?」
「へっ?何それ?」
「んとね、変形合体って…分かるかなぁ?」
「うん、で?」
あんまり乗り気じゃないスクルドの返事だけど、今日は
親父のフォールディングバイクに乗って来たので
ちょっと自慢したかっただけなんだ。
仙太郎は「ちょっと見ててよ」と言って、乗って来た
自転車を、サササッとコンパクトに畳んでみせた。
「どう?スゴイだろう!」


スゴイと言われても、スクルド謹製のばんぺいくんRXは
その上を行っているし、もっとすごい合体技もある。
だが、しかし待てよ、とスクルドは考えた。
それはいつもの愛読書である『どぼん』の連載中の
恋の季節シリーズ〜夏」に登場する主人公とヒロインが
良く似たシチュエーションで話をしていた事を思い出した
からなのである。そこでスクルド
「わぁ〜!すごいすごいっ!」と感嘆するのだが
どうしても付け焼刃的台詞は否めない。
そっと仙太郎の表情を覗き見ると、妙な顔つきになってる
もんで、ありゃ、こりゃワザとらしかったかなぁ?と
困ってしまった。


仙太郎は仙太郎で、
あちゃー 女の子に、こんな話は面白くなかったかな?と
思って、困惑していたのが実情なのだが、妙な行き違いで
すれ違う所が、お互いの気持ちを労わる結果となって
しまったのであった。


「ねぇ?家、よってく?」
突然スクルドが言い出した提案に、仙太郎は
「へっ?」と間抜けな声を出してしまう。
「べっ、別に、無理とは言わないけど、さ…」
「あっ!そんな事ない、ないよっ!」
「じゃあ、よってく?」
「うんっ!喜んでっ!」
仙太郎は畳んでいた自転車を元通りにして、スクルド
横に並んだ。
「じゃあ、行こっ!」
そう言って、仙太郎の手を取ったのはスクルド
それがまた妙に自然だったので、仙太郎は驚いた。
「あ…うんっ」


もっと、あたしがしっかりしよう。
あたしは女神さまっだもん。
いつか、大人になって、あなたに巡り合うその時まで
あたしがちゃんとリードしなくちゃ、とスクルド
思ったそうな。


未来へ 思い込めて。


おしまい。

by belldan Goddess Life.


*** *** *** ***


時の守護神、未来を司る女神スクルドも、ちゃんと
将来を考えているようです。最も普段の素行は
実にアレなんですが(苦笑)