どうなるの?

 机の引き出しの3番目の奥には、魔物が潜む。
誰にも気取られてはいけない。悟られてはダメだ。
誰も居なくなる時間、俺はそっと確認してみる。
そこに鎮座する異界の者どもよ、案ずるなかれ。
やがて時がみち、下界に召還しようぞ、と。


「なんてね」と螢一は、ほくそ笑む。


ともかく...
清らかな女神さまっには、知られてはいけない。
俺なりに封印でもかけるとしよう、と螢一は
思い付くままの単語を口ずさみ、引き出しを閉じた。



西の空が茜色に染まる頃、その清涼とした佇まいの
お寺の庭に、聖なる歌が響き渡る。
ノルン三姉妹の次女、ベルダンディーは祈りのポーズ
のまま、西の空へと賛美歌を奏でる。
空気に張り詰めた緊張感が宿り、そして開放された
崇高な精神が拡散し出すと、澱み切った気配が清浄化し
まるで天上界の気配と同じ様相が展開されて行く。


それはまるで、綺麗に清掃されたお寺の庭と同調して
いるかのような感覚になってしまう。
「うんっ 綺麗になったわっ!」
ご満悦な笑みを浮かべ、彼女は母屋へ向かって行った。


今日はとっても夕日が綺麗だったわ、とベルダンディー
は感じ、その事を螢一に伝えようと、彼の部屋へと
向かった。
「螢一さんっ?入っても良いですか?」
ふすまをトントンとノックし、声をかける。
そのとたん、ドサッと音がし、その後螢一の声がした。
「あっ…あ、べ、ベルダンディーかい?」
慌てる螢一の声に不思議に思うベルダンディーだったが
「お忙しいのでしょうか?あの…でしたら…」
と、諦めようとしたその時
「あ、大丈夫だよ、どうぞ〜」と螢一が言った。
良かった、と思い、ベルダンディーはふすまを開け
部屋の中に入って行った。


「あらまぁ!」
それはベルダンディーの第一声である。
なんとも螢一の部屋が散らかっているではないか。
感嘆の声、そして喜びの声でもある彼女の声は
その後「あの、螢一さんっ?お掃除しましょうか?」
と続き、その顔には満面の笑みが付いて来た。


さてさて、困ったぞ…と螢一は思った。
清らかな女神さまっの、その満面の笑みを持って
誰が「いいえ、いらないよ」と言えるだろうか。
しかし彼には、死守しなければならない領域がある。
「あ、あはは…今日はいいよ、明日にでも」とか
「うん、大丈夫だよっ 俺だけで掃除しちゃうから」
云々、色々考えるのだが、下手な考え休むに似たりと
言ったもので、ますます返答に窮してしまう。


誰か…助け舟を出してはくれないか?と神に祈るが
眼前には女神さまっがいるのに、何をしているのだ?
その時だった
「お〜ほっほっ〜!お困りのようねっ!」と声がした。
聞き覚えのある声だ、と言うか部屋から聞こえるぞ?


「姉さんっ?」
「そうよ〜ん」
「ウ、ウルドかぁ〜!」
「せいか〜い!」


もしかして、もしかしたら、ウルドは最初から俺の部屋
に居て、全てを見ていたって事なの?
話は、ますますややこしい展開に陥ってしまった。
いや、マテよ? このドサクサに乗じて逃れる手は
あるのじゃないか?と思案する。
その時だった。
「あーもー!うっさいわねー!」と乱暴にふすまが開く
そこには、モーレツに怒っているスクルドが立っていた。


どうなる俺? そして俺の聖域…引き出しの三番目奥の
魔物は、ついに女神たちに退治されてしまうのだろうか。


どうなるの?


by belldan Goddess Life.


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アフタ最新号の背表紙…嫌いなナスとニンジンと一緒に
おネンネしているよ…可愛いねぇ