夏のカフェで

「あら?ウルド姉さんは?」
また散歩にでも出掛けたのかしら?とベルダンディー
思った。
山裾にモコモコの入道雲が、空の青とクッキリと輪郭を
隔てた、ある日の午後。
日傘を差して歩くご婦人達、陰影が濃くなる街路とか
それは、そのまま夏の風景だ。


華奢なテーブルに、白いテーブルクロスが眩しい。
紙のコースターには、汗をかいたグラスがひとつ
黄金色をした飲み物は、何かのカクテルなのだろうか
その前に、夏の女神さまっと称するに相応しい女性が
退屈そうに座っていた。
「ふぅ・・・ホント、退屈ねぇ」
ウルドは切れ長の瞳を、いっそう細めて街路を見詰める。


ウルドの趣味、それはお酒…それだけじゃない
いわゆるヒューマン・ウオッチが彼女の暇潰しに選ばれた
事は、彼女自身に由来する。
時の守護神、過去を司る女神としても、地上界に暮らす
多くの人々の日々の暮らしは、とても興味深いものが
あるのだった。


温故知新、古きを訪ねて新しきを知ると言うのか
大体の人間の過去を顧みれば、現在の姿は分かると云う
「ま、簡単に言えば、作用反作用の法則とも言えるわね」
たくさんの人が通り過ぎる街路に隣接したカフェで
時折頬杖も付いたりして、ぼんやりと眺めていた。


そんなアンニュイな褐色の美女を世の男性が放っておく
訳がないのも現実だ。
ひっきりなしにナンパしかけてくる勇者達を横目に
退屈そうに小さなアクビをひとつ。


「あ〜あ、今日も収穫はなし、と」
スッと席を立ち、そしてウルドは風のように姿を眩ます。
そして残り香だけが、周囲に立ち込めるのだ。


もしかしたら、君も見たかも知れない。
街路のカフェに、甘美な香りを感じたなら、それは
多分ウルド姉さんの、甘く切ない恋の残り香かもしれない


ご用心を(笑)





ところで「収穫」って何だろう?



聞いてみた(私は勇者か、愚者か?)



「えっ?収穫の事?あ〜それはアレよぉ、『恋』ってねっ」
あ、やっぱりそうなんですか。
「そりゃあ、あたしだって…って言うか、気になる?」
そ、そりゃあ…少しは。。。
「へぇ〜気にしてくれるんだ」
あ、えっと…そろそろ時間が押しているんで、この辺で(汗)



by belldan Goddess Life.