音の調律編 その後

地上界は夏なんだな...


リンドはある場所を思い浮かべていた。
ワルキューレ候補生のクロノが帰還し、例の件も
完全に完了した。そして今、彼女はささやかだけど
ヴァカンスの時間を手に入れた。
「地上界の時間としては、そう、48時間と少しだ」
まる2日ある。この休日に、挨拶がてら他力本願寺
訪問しようと計画した。
ペイオースも誘ってみたが、ゲートの問題がまだ少し
残っているみたいなので、あえなく却下された。
「本当は参りたいのですわよ、でも…」
「仕方ない事だ。では、私だけで行ってくる」


踵を返す私を呼びためたペイオースは
「ちょ、ちょっと!もしかしてその格好で出掛ける
つもりですか?それは…ちょっと野暮ってものですわ」
少し困り顔のペイオースは言葉を続ける。
どうやら彼女は、私の神衣姿を訝っているらしい。
「そうですわね、地上界は夏ですもの…そうですわっ!
淡い青色のワンピースなんて、どうかしら?」


「ワンピース…」
「ご存知ない?」
「知っているが…」
「それでしたら、それに着替えてらして?」
「そう…だな…」


内心、まさかクロノが着たような衣装を指定されたら
どうしようと思っていたが、それだったら…
短く法術を唱え、着ていた神衣を展開させた。
ペイオースの言う青色のワンピースに再構築される。
「これで…どうだろうか?」
「あら、とってもお似合いですわよっ」
そう言って彼女は、脇に置いてあった包みを差し出した。
「はい、やはり手土産は必要ですからね」
包みを見ると、女神モールの『温泉饅頭』と明記してある。
さすが1級神、用意周到だと思った。
「何だか…色々ありがとう…では、行って来る」
「いってらっしゃい!楽しんで来てっ!」


自身で形成した方陣ゲートを開いて地上界を目指す。
行き先は、もちろん他力本願寺だ。
「螢一くんは、息災だろうか…」
ふわりと風になびく、青い色したワンピースの裾が
彼女の気持ちを代弁しているようだ。


どこまでも青く高い空から、光の帯が降りて来る。



 リンドの夏休み。


by belldan Goddess Life.



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そんな訳で、ありえそうな、そうでもなさそうな話…