序章「さよなら女神さまっ」

慌しい日常。それが森里家の風習なのかどうか
それは分からないが、俺の元へと降臨した女神さまっの
それはそれは慈愛に満ちた生活は、幸福そのものだ。
だが、一抹の不安も無いとは言えない。


夜、眠る直前、それが静寂の一時なのだが
俺はそれを、至高の一時と呼んでいる。


「今日も色々な事があったよなぁ...」
別に今日の反省をしようと試みている訳では無いが
それでも思考は、反芻してしまうであった。
幸福、この二文字に託された思念は、ミクロ的に見れば
しごく個人的なものだと思う。
己が幸せの為には、他を排除するも厭わぬと言った行為は
それ自体、賞賛されるべき行為ではないが、それも幸福の
ひとつだと思う。
マクロ的に見れば、例えば仏神の思い、思いと言うか願い
それは多くの人々の幸福であり、この地球、或いは太陽系
の諸々の生物への思いなのだろう。
山の裾野に居ると、山頂からの眺望は困難であり
頂上ばかりにいると、もしかすると裾野の事情には無頓着
になるかもしれない。


俺と言う地上に暮らす人間と、天上界の住人である
ベルダンディーにも、そんな格差があるのかな、と
ぼんやりとした思考で、睡眠へと船を漕ぎ出そうと
していた。


「ふたりの幸福って、いったい何だろうか…」
幸福を成就する為の手段として俺は
彼女に結婚を申し込もうと考えていた。
このままふたり、何もない状態のまま時を過ごすのは
何か自然でないと思う。
もし、彼女がその申し出を受けてくれたら、嬉しいのだが
その反対に拒否されてしまった時の事を考えると...


彼女は女神さまっだ。
女神の本懐、その信念はやり仏神に近い所にあるだろう。
地上の、それもひどく個人的な幸福だけの為に、自身の
時間を提供する…う〜ん、ちょっと自虐的かなぁ。
考えれば考えるほど迷宮へと入り込んでしまう思考に
終止符を打ちたいと思う。


やがて抗いがたい程の睡魔が襲って来たかと思うと
森里螢一は、その流れに歯向かう事もせずに、自然な
流れに身を任せて行った。



序章「さよなら女神さまっ」


by belldan Goddess Life.


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脳内プロットを整理する意味合いもあって。
物語は構築中、しかし構築させるのも辛い作業だと。
そんな中、焦る気持ちを彼に委ねて。