ずっと、恋している。

かんなぎ」この作品を拝見して思う事がある。
ある日突然現れた女の子は、神さまだった…だなんて
今では定番の設定なのだが、やはり夢があるよね。
空から女の子が落ちてきた、だなんて、ラピュタみたい…
棚から牡丹餅、有り得そうで有り得ない話は、古今東西
永遠のテーマなんだろうか。


理由は後付けでOK、とにかく今までの日常から一変して
まるでジェット・コースターさながらの日々が到来する。
あるいは冒険、あるいは探検、ドキドキの世界が展開する。


心は枯渇し、まるで水を求めるようにして
「もっと知りたい、君の事を」と思い焦がれる。
充たされぬまま時間は径行し、焦燥感は募るばかりだが
ふと見れば、いつもそばにその娘は居て微笑んでいる。
こんなに近くて、こんなに遠い存在に苦悩したまま、ある日
突然気がつくんだよね。


それが恋。
搾りたての果汁のように濃厚な思いがあふれてくるような
抑えられない気持ちは、もはや落下するしか手段は無い。
熟した恋心、受け止めてほしくて、でも行ったり来たりの
平行感、もう少しで届きそうで届かない。


奇跡の時を待つって言う事。
主人公と同じ気持ちを共有しながら、傍観者たちは旅立ち
不思議なその世界の住人に恋焦がれる。
たくさんの期待、たくさんの言い訳、そしてたくさんの諦め
を携えて。


最後は、夢オチ?それとも祈願成就?或いは別の観点で
その世界を終演させて、新しい同じ世界へと旅立つの?
身体がたくさんの栄養分を求めるように、心もまた
同じく栄養を求める。


心の栄養って何?
それは夢、愛情、そして素直な感受性。
この世に生を受けて、そして育まれて来たあなたは
その成長が、よもや身体だけ、経済力だけとは思ってない
と思うが、それでも見えないものには無関心になる。
自分の心なのに、無関心?
本当に面白い事実なんだ。


相手を思い遣るばかりに、自分の事が疎かになったり
自分の事ばかり考えているのに、自身を省みないとか
そこに、心に何が在って、何が必要なのか分からない。
「もっと人の事を考えなさい」
「もっと自分を大切にして」 これは同意語かもね。


この世界は、とても繊細なバランスの元に成り立っている。
新しい発見をする度に、世界はとても明確に映ってくる。
歴史を顧みて、現在を想う。
新発見をして、未来を想う。
そんな世界に存在している事実に、あなたは何を想う?


そう、多分…ずっと恋している。


ずっと、恋している。



*** *** *** ***


夕餉を終えて、洗物をしていたベルダンディーの手が
ふと止まった。
「螢一さんっ…」
それはただの瀬戸物、螢一のお茶碗だった。それをただ
洗っていただけなのだが、何故だかとても愛しく思えた。
今、この一瞬は、儚い一瞬なのだけど、でもとっても
かけがえのない一瞬なのだわ。
淡々と過ぎて行く日々は、誰にでも等しく、誰にでも愛しく
在るのだわ、とベルダンディーは思った。


とても長く、そして遠いあの頃の風景が頭に過ぎる。
積み重ねてきた、たくさんの想い出は、いまでもこうして
鮮明に蘇って来る。
楽しい事、辛い事、悲しい事、全て螢一さんっと共に
私も過ごして来た。
私は、なんて幸せ者なのかしら。


洗物の手を止めて、神さまに祈った。
感謝の言葉と共に。
ふと瞳から零れ落ちる、涙。 
それは幸せの証。


ベルダンディー!」
愛しい彼が呼んでいる。嬉しくって早く早くと心は急く。
「はぁい!今、行きますね〜♪」
歌うように返事を返す女神さまっの後姿からは、白き翼
上から金色の光が降り注いでいた。


by belldan Goddess Life.