落葉

 その者はカサカサと音を立てて
 夜空に流れる風に身を任せて 舞い落ちるのだ。



降り積もる落葉は、その天寿を全うして
地上に落ちて来る。
風に吹かれ、カサカサと夜を彷徨して
やがて静寂が訪れた。


朝。


他力本願寺の横、母屋の玄関が開き
訪れた朝の光の中に、見目麗しい女神さまっが佇む。
境内の横、母屋の前の庭の落葉樹の下には、昨夜の夜風が
遊び散らかしたような木の葉たちが積もっていた。
「うふふっ 積もったわねっ」
とても楽しそうに微笑む女神さまっは、一旦玄関へと消え
そして、竹箒をひとつ手にして登場した。
深まる秋の、それは日常の作業なのだけど、彼女はとても
楽しそうだ。
箒で落葉を集めて行くと、砂地に箒で掃いた後が残る。
それは波紋の様で、複雑な幾何学模様にも見えた。


集めた落葉の山があちこちに点在している。
さらにそれを集めて、エプロンのポケットから取り出した
ポリ袋を広げた。
「みなさん、ご苦労さまでしたっ」
落葉達に労いの声をかけ、優しい眼差しを向け
ポリ袋に入れようとした時だった。


「あっ!ベルママ〜!おはようございますっ!」
お向かいの梨沙ちゃんの声が聞こえた。
11月の、ある連休の日。
「あら、おはよう 梨沙ちゃん」
作業を止め、彼女に向かって笑顔で答える女神さまっ。
「何しているの?お掃除?あ、そっか…!」
突然思い出したかのように梨沙ちゃんは言った。
「どうしたの?梨沙ちゃん?」
不思議そうに女神さまっは尋ねた。
「あのね、あのね・・・」


あのね、ベルママ…実はお家にたくさん栗があるの。
だからね、それを持って来て、焼き栗しようと思ったの。
ダメかな?ねぇ、ダメ?


「焼き栗?」
「うんっ!」
楽しそうね、と女神さまっは微笑み、了承した。
待ってて!と梨沙ちゃんは手を振り駆けていった。


手を振り返し、彼女の後姿を見つめながら女神さまっは
落葉たちの事を思った。
「もう一働き、お願いしますねっ」
風に揺られて、落葉がカサカサと鳴った。


秋晴れの空は、遠く高く。
はぐれた雲が、のんびりと泳いでいた。



落葉。


by belldan Goddess Life.