夢の続きを 5

クリスマス・イヴの当日、普通に出勤した螢一は
とても珍しい光景を目にした。
「あれ、千尋さん!?」
螢一より早く出社してくるのは、何時以来だろうか。
店の脇に千尋さんのドゥマーニが止まっている。
その横に自分のBMWを止めて、店の扉を開けた。


「メリークリスマス!森里くんっ!」
上機嫌な千尋さんの甲高い声が店内に響く。
「あ、おはようござい…おっと、メリークリスマスっ」
慌てて彼女のテンションに付いて行こうとしたが
何だか裏声みたいな声が出てしまった。
「おぉー!テンション高そうねぇ…さすが!」
何がさすがかは分からないが、それでもこの日だけは
何か特別な気がした。
「さすが…って」と苦笑する螢一だった。


そして、さらにニヤニヤが止まらない千尋さんは
「実はねぇ、あたしからプレゼントがあるのよねー!」
「ええー!」
「と言っても、スペシャル・ゲストなのだけど、ね」
「はぁ...?」
それから千尋さんは、別室に目を向けて
「さぁ、来てちょうだい!」と誰かを呼び付けた。



そこで彼は、とても信じられない光景を見る事になる。



「ベ、ベルダンディー!?」
別室から、はにかみながら出てきたのは、あの日以来
会っていない女神ベルダンディーであった。
もっとも千尋さんには、優秀なスタッフとしての認識しか
ないのだが、彼女が螢一と別れて、そして店を去って行った
時は、とても悲しんでいた。
「こ、こんにちは…お久しぶりです、螢一さんっ」
ベルダンディーは、神妙な面持ちで螢一に挨拶をした。
「うん、久しぶりだよね…その…元気だった?」
うまく言葉が噛み合わない。しかも声も上ずっている。
先程の妙なテンションを引き摺っているのだろうか、と
彼の思考のレブカウンターは、レッド・ゾーンへと向かう。
「はいっ、私も…そして姉さん達も元気ですよっ」
その優しい笑顔、そしてうっとりするような声に
螢一の心は、オーバーヒート寸前だったが
「そうか、それは良かった…」
と、努めて冷静さを失わずにいようとした。


千尋さんは、相変わらずのテンションで、ベルダンディー
にハグして、再会の喜びを表していた。
それから質問攻めで、色々と聞いていたようだが、螢一は
黙って自分の仕事に熱中した。
ゲストだと言うのに、ベルダンディーは店を手伝った。
それは何時もの様な風景、そして、まるで夢のような出来事
だった。


店が閉まる時刻が迫って来た。
クリスマス・イヴなのだろうか、客足が少なかったので
少し早仕舞いと相成った。
「んじゃ、あたしは用事があるから、お先に〜!」
千尋さんは、多分いつもの教会へと向かったのだろう。


店の鍵を閉め、螢一とベルダンディーは店先にいた。
「本当、久々に会えて嬉しかった…」
「はい、本当に…」
まるで時が逆行したかのような、ふたりの会話に
どちらともなく笑ってしまう。
「今回も任務なんだろ? ホント、ご苦労様っ」
螢一は、差し障りの無い言葉を選んで伝えた。それから
「送って行くよ…その…」
その場所って、どこなの?と話を続けようとしたのだが
ベルダンディーの様子がおかしい。


俯いてしまったベルダンディーからの返事を待った。


ベルダンディー? あの、どうしたの?」
「螢一さんっ あの…私…」


夢の続きを 5


by belldan Goddess Life.


*** *** ***


そんな訳で、連投になってしまった。。。
しかも、もう少し続きます。