夢の続きを 7

これが螢一さんっの新しい住まい、これが螢一さんっの
新しい生活なのだわ、とベルダンディーは思う。
そして、とても懐かしい感じがした。
新しいのだけど、どこか哀愁を帯びた建物もそうだけど
そうなんだわ…私が始めて螢一さんっと出会った場所も
こんな感じだった。


「まだ…ちょっと散らかっているけど、座ってよ」
螢一はちゃぶ台の前に座布団を敷いた。
「あの…お茶でいいかな?」
そのまま座っててね、と螢一は台所へと向かった。
ちゃぶ台の前に座ったベルダンディーは、所在なさ気で
どうにも落ち着かない。
「あ、私…手伝いますっ」と螢一に告げるのだが、彼は
それを聞いて
「うん、大丈夫だから…待っててね」と答えた。


何だか少し淋しい…そんな思いにもなるベルダンディーだが
あれから幾年月過ぎたのだろうか…1年?もう少し?
地上界の時間と天上界の時間では、格差が有り過ぎる。
螢一さんっは、あれからたくさんの経験をしたんだわ。
私の知らない螢一さんっ…これも新しい発見なのかしら。


そうこうしている内に、螢一がお茶を運んで来た。
「何とか形になっていると思うんだけど…」と苦笑して
お茶の入ったカップをちゃぶ台にのせた。


「あ…」
このカップは、以前私たちが使っていた物だわ。
今でも大切に使っていてくれるのね、螢一さんっ。
嬉しさが込み上げて来ると同時に、一抹の不安も過ぎる。
そんな気持ちを知ってか知らぬか、螢一は話し出した。


「本当に久しぶりだよね…俺は相変わらずの暮らしだけど」
そう言って笑う螢一の表情には、どこか翳りがあった。
自分の事を一通り話すと、今度はベルダンディーに尋ねる。
「で、さ…今回は、その…任務じゃ無いって…それは?」
それは、どう言う意味なのだろうと思い、尋ねた。


少し思案して、それからベルダンディーは話し出した。
「螢一さんっ あなたの願いは…叶えられましたか?」
まるで襟を正すように、正座し直して、ベルダンディー
螢一に答えを求めた。
「へっ? あ…ああ、そうだね。うん、ちゃんと叶ったよ」
そう言いながら微笑した。
「君と言う女神さまっとも楽しく暮らせたし、それはまるで
夢のような生活だった」そして、念を押すように
「本当に、楽しかったよ」と言葉を付け加えた。


そう言うと、君が喜ぶと思ったから…


「本当ですか?」
「うん」
「…ウソだわ…」
「えっ?」


ベルダンディーは、螢一の瞳をじっと見ながら
何かを決心したような、そんな表情で言葉を紡ぐ。
「私は女神として螢一さんっの前に現れ、あなたの願いを
ひとつだけ叶えます、と言いました。そして、あなたの言葉
それがどれほど衝撃的だったと思いますか?」
「ずっとそばにいてほしい…それは私がずっと前から聞きた
かった言葉でもあるんです」
「神も完全な存在じゃないんです。悩みもしますし、過ちも
犯します…私は、女神である前に、一人の女として、あなた
の事を思ってた。長い長い悠久の時の中で…」


ベルダンディーの、その真剣な面持ちに圧倒されながらも
螢一は、ただ黙って聞いていた。


「螢一さんっ?私の願いを知っていますか?」
「…それは、多くの人の幸福…だろ?」
「それは女神としての私の願いです。でも、本当の私の
願いは、どこに在るか…分かりますか?」
「それは…」


彼女、ベルダンディーの本当の願いって…
螢一は頭が混乱した。
あの頃の楽しい記憶と、そして辛い記憶が入り混じって
彼を責め立てているようだった。



夢の続きを 7


by belldan Goddess Life.



*** *** ***


いよいよ佳境に…
と言うか、今年中に書き上げれるのか?w