夢の続き…そして

心の中に、とても爽やかな風が吹き渡った感じがした。
今までのモヤモヤとした気持ちが一蹴され、自分の
正直な気持ちだけが、そこに在る。


もう、逢えないかも知れない。
でも、それでも良い。
後悔は無かった。
ベルダンディーを愛している」
この思いだけが在れば良い、と。


螢一の脳裏に想い出の欠片が蘇って来る。
それはまさに夢のような時間だった。
いつも諦め、乾いた笑いしか持たなかった彼に
こぼれるような笑顔を与えてくれたのは女神さまっだった。
その続きを求めていた。そしてそれは、叶わぬ夢だとして
いつしかまた、諦めていた自分がいた。


それでも夢を求めていた。その答えが今、分かったんだ。


「俺は君を、愛し続けるよ…」
永遠に…と、螢一は祈った。



 


*** *** *** ***


不思議な事、それも奇跡ってものは、一点の曇りの無い
無垢な思いから生じるのかもしれない。
今まで無音だった、銀色の世界に音が蘇って来る。
それは優しい風と共に、やって来たのだった。


雪は止んで、冬だと言うのに心地良い風が、螢一の周りを
旋回して行った。
それと同時に、腕時計のダイアルが煌めき出す。


そう、光だ。


眩い光の束が飛び出して来て、周囲を照らし出した。


ベルダンディー!」
その光の中、彼女が佇んでいた。


「螢一…さんっ?」
どうして?ここはすでに異世界へと向かう空間なのに
螢一さんっは、私を…探しに来てくれたのですか?


螢一はベルダンディーの元へと走り出した。
光の束は彼の周りを包んで、難なく空間を横切って行く。
ベルダンディー!」
愛しい人の名前を叫ぶ、この思いだけが本物だ、と。


私、ずっと夢見ていたんです。
あの頃、初めてあなたと出会った時から。
その時は、螢一さんっという名前ではなくて、他の名前で
でも紛れも無く、今の螢一さんっの魂でした。
あれから…長い長い悠久の時を経て、私はあなたの事を
思い続けて来たんです。
叶わぬ恋だと思って、泣き続けた日もありました。
それでも諦め切れずに、私はあなたの事を思い続けました。


今、夢の続きが始まる。
夢の続きは、現実となり、目の前に現れる。


「螢一さんっ!」
螢一さんっ螢一さんっ…何度も呼び続け、駆け出した。


君を思う、この一瞬一瞬が愛しい。
あなたを思う、全ての時間が愛しい。
ふたりは抱き合って、何度も言い続けた。
「愛している」「愛してます」と。
ふたりは、その存在を確認し合うように、何度も唇を重ね
何度も抱擁した。
溶け合うようにして、このままいつまでも、と。


夢の続きを END.

 


*** *** *** ***



思えば最初の願いは、愛の告白だったんだ。
それは自然な、そして心からの思いだった。


「ねぇ、最初に言った…その、願い事の事なんだけど、
覚えているよね?」
「ええ、忘れろ、と言われても、忘れません…」
「俺、思うんだけど、…最初から『好きです』って言えば
良かったんじゃないかな?って」
「うふふ…螢一さんっ それでは願い事になりませんよ?
それは…『愛の告白』ですもの」
そう言って、頬を染めるベルダンディー
とても嬉そうに微笑んだ。



そして、現実へ。


by belldan Goddess Life.


*** *** ***


「夢の続きを」これにて終幕です。
最後までお付き合い下って、ありがとうございました。
拙ブログの4周年記念として連載し、慌しい師走の中
疾走する様に駆け抜けて来た、ふたりの恋物語
どうやら上手くいった模様ですね。


今年もいよいよクライマックス。大晦日を迎えました。
本年もたくさんの支援、ありがとうございました。
良いお年を!みなさんに幸あれっ!