なぞの・・・

その頃ウルドは…


「こりゃテラモエス!」
満面の笑み、或いはニヤニヤ動画といった面持ちで
ひたすらTVモニターに釘付けだった。
手には何やらコントローラみたいな物があり、盛んに
動かしている。


何かゲームを堪能しているようだった。


2級神管理限定のウルド。ユグドラシルの管理サポートを
これまでやって来た経験上なのか、地上界のゲームシステム
なんぞ、赤子の手を捻るより簡単な事だった。
どんな難解なゲームでも、数分後にはクリアーしてしまい
後で内容を事細かに説明する事も朝めし前...
そんなウルドが、ある怪しい、と言うか、螢一の先輩である
田宮と大滝から仕入れたゲームをするや否や、猛然と虜に
なるといった有様であった。
それがマリアベルが通う聖鈴学園中等部に、双子の姉妹が
転向して来た時期と合致している。


『アイドル・マイスター』と称されたゲームの中で
一体何が起こっているのだろうか...


その頃みんなのティールームで、マリアベルの両親が
心配顔で話をしていた。
「ねぇ、螢一さんっ? あの、ウルド姉さんの事なんです
けど…今回はちょっと…心配ですっ」
ちゃぶ台の前に泰然と座る男に向かって、楚々とお茶を淹れ
尋ねるように聞いたマリアベルの母親は
「姉さんらしくない…そんな気がするんです」
と、溜息まじりで言った。


「あ、ありがとう」とお茶を注がれた湯飲みを取って
口元に運び、馥郁たる茶の香りを堪能しながら螢一は
「うん…でも、何時もの事じゃないのかい?」
なぁに、大丈夫さと少年のように顔をほころばせた。


この笑顔…好きっ


あ、なんて関係ない事を!私ったら…ほんと…
それでもうれしさは隠せないマリアベルの母だった。


「はい、螢一さんっがそう仰るなら大丈夫ですよねっ」
マリアベルの母親は、螢一の横に座り直して甘えるように
「ねぇ…螢一さんっ」
「な、なんだい…ベルダンディー
「好き?」
「えっ!? あ、うん…好きだよ」
「ほんと?」
「本当だとも!」
「嬉しいっ!」
そう言ってマリアベルの母は、旦那さんにキュと抱きつく。


「ただいま〜」
玄関先から声がした。帰宅したマリアベルである。
無論、返事は無い。良くある事だ。
またパパとママは、ふたりだけの世界へと逃避行を始めて
いるのだろう。
框で靴を脱ぎ、綺麗に揃えてからみんなのティールームへと
向かった。
「ただいま〜」
マリアベルの両親は、愛を確かめ合っていた。
多分、キスの後なんだろう、お互いの唇から唾液が糸を引き
キラキラと輝いていた。
マリアベルの姿を見て、慌ててお互いの唇を拭ったが
後の祭りだった。
だがマリアベルには、こんな光景は日常茶飯事だったので
気にもせず、もう一度「ただいま〜」と言った。


「お、おかえり マリアベル
「おかえりなさいっ マリアベル
動揺は隠せないのか、ちょっとドキマギとした返事だ。
「ねぇ、ママ? ウルド姉さんは?」
まったく気にしてない(笑)


「あ、姉さんなら…部屋に居ると思うわ」
マリアベルの母が言うと
「分かった。ちょっと行ってくる」
踵を返し、マリアベルはみんなのティールームを後にした。


「何かあったのかしら?」
「さぁ?」
マリアベルの両親は、不思議そうにお互いの顔を見詰めた。


なぞの転校生(抜粋 の2)


by belldan Goddess Life.


*** *** ***


ドンドン行くよ〜