女神と猫と日常と

この春、猫実商店街の路地裏にもたくさんの子猫が生まれた。
母猫に見守られながら、すくすくと育つ様を、たくさんの仲間達が
陰になり日向になり助けているのだった。
そして、
その様相を何時の日も見詰めていた、とある女神さまっがいる事を。


その女神さまっは、旋風のように空から舞い降りて来る。
箒に乗って、銀髪の髪を風に任せて。
「元気してた〜?」
褐色の肌も露な衣装を纏うその女神さまっは、目を細めて
生まれたての子猫達を見る。


子猫達もまた、その女神さまっを見詰める。
「にゃ〜」
「うん、元気があってよろしい!」
そして、何か祝詞のような言葉を高速言語で口にするのだった。


幸せになりなさい。


「じゃあね」
ウインクひとつ残して、その女神さまっは空へと舞上がる。
五月の透き通る風のように。



その頃、他力本願寺の母屋では、その女神さまっの妹が楽しげに
炊事をしていた。
「おね〜さま〜ウルドは?」
「あら、姉さんなら、ちょっと用事があるって出て行ったわよ?」
「ふぅん…また妙な買い物なんだろーな…」
「うふふ…気になるのね?」
「べ、別にウルドの事なんか気にしてないわっ!」
「ふふふ…そう?」
その時、玄関先で何やら音がした。
「あら?お客様かしら?」
こんな時間だもの、螢一さんではないわね、とベルダンディーは思う。
「あ、あたし…見てくるっ」
もしかしたら、ウルドかもしれないもん、とスクルドは考える。
台所を出て、みんなのティールームを抜け廊下に出ると、猫が一匹
玄関先に、ちょこんと座っていた。
「…なぁんだ、猫か…」
猫も不思議そうな顔をして、スクルドを見詰める。
「にゃおん」
そう鳴くと、猫は踵を返すように外へ出て行った。
「変なの?」
スクルドは首を傾げ、台所へと帰って行く。


「誰だったの?」
「さぁ? あのね、猫が居たんだよね」
「そう、猫さんが…」
ベルダンディーは思い出したかのようにウフフと笑い
「きっと姉さんへのお使いなのねっ」
とても嬉しそうに言葉を続けた。


スクルドはますます分からなくなる。だけど聞くのも面倒くさいので
部屋に戻る、と告げ台所から出て行った。


「今年もたくさん生まれたのかしら」
小さな命、一生懸命生きて、そして
「たくさんたくさん、愛を受け取ってね」
今度のお休みの日に、螢一さんっと見に行きたいわ、と
ベルダンディーは優しく微笑した。


女神と猫と日常と。


by belldan Goddess Life.


*** *** ***


そして劇場版の冒頭、桜並木をバイクで疾走し、とある町角で
たくさんの猫達を愛でるベルダンディー達のショットに繋がる。
と言う手筈だと、思う。思いたい(笑)