女神は歌う。

見覚えのある風景 記憶の片隅の風景に
似た そんな感覚 頬に風を受けて
目を細めた 空に浮かぶ小さな雲に
君が音楽を始めた頃 ボクも音楽を始めて
君が音楽を続けた時 ボクは気持ちが途切れて
君が音楽を抱きしめて ボクが空虚を抱きしめて
君が音楽になる頃 ボクは何にもならなった


「音楽の神さまっているんだよ?」
「音楽の神さまっは、女神さまっなんだ」
「誰の事?」
「教えない 探してみて?」


心に響かない遠い言葉に まるで水の中で息している
プクプクと泡になって そして海中に消えていって
その内のひとつが海上まで届く頃は まるで意味を成さない
遠い音 遠い言葉 遠い思い


見た事のあるような風景に 麻痺したかのように反応して
これじゃあ まるで条件反射か脊髄反応だって笑った


「今、生きてるって感じる?」
「なんにも感じない」
「あはは、それも感じた事になるんだよね」
「え?」


一陣の風が髪を逆撫でして行く 慌てて押さえても
遅過ぎて 押さえなくても早過ぎて
ねぇ君は知っているの? この世界はとても不完全だと


心に浮かぶ風景は いつも荒涼していて命の息吹さえ感じず
いつだって不安材料だけは 大安売りしているって言うのに


「だから音楽が必要なんだよ」
「音楽を抱きしめてみてよ」
「だけど…もう遅いよ」
「そう感じているのは、未練があるからだよ」


どこからか聞こえてくる それはとても小さな歌声
両手を耳に当てて 注意深く聴いてみる
これは誰が歌っているのかな 優しいメロディと共に


「音楽の神さまっは、女神さまっなんだ」
「音楽を抱きしめてみてよ」


君の言葉が胸の中へと響き渡る
緩やかに溶けて行くような感覚に 音とひとつになるような
気がして そっと目を閉じた


ふんわり包むような歌声に抱かれて あの頃に還って行くよ
言葉の意味なんて分からない だけど どうしてだろうか
心の中 ずっと奥の奥にある記憶に触れて行くように


見覚えのある風景 記憶の片隅の風景に
そっと手を伸ばした 愛しいものを触るようにして
女神さまっの歌声を聴きながら


 女神は歌う。


by belldan Goddess Life.


*** *** ***


女神さまっが好きです。