恋の必勝講座

恋を実らせる為の必勝講座と称して、ウルドが妹のベルダンディー
に伝授したのは、何も心構えだけではなかった。
曰くウルドは、何事もムードが肝心だとのたまう。
「そりゃ心も大切だけど、やはり伝えてこその愛だと思うわ」
そう言って勝ち誇ったかのように両手を腰に当て力説する。
「そうなのかしら…でも、姉さんが言うならそうなのかも」
何気に疑う事を知らないベルダンディーは、信じてしまう。
もちろんウルドだとて女神さまっの端くれ、意味の無いウソは
言わない、と思う。多分。



「それで姉さんから頂いたのがコレなんです」
嬉しそうに語ってくるのは、もちろんベルダンディー
ほら、と言って見せてくれたのは、黒くて光沢のある衣類だ。
「へぇ…」
へぇ、と感心しながらよくよく見ると、それは下着の類だ。
「・・・へぇ…」
そして彼女は、ちょっと着替えてきますから、と言って
部屋を出て行った。


数分後、その衣類に着替えたベルダンディーが部屋に戻って来て
「どうでしょうか?」と尋ねてくる。
それに対してこの俺は、例えば「よく似合っているよ」とか
「素晴らしい!君はまさに女神さまっだよ!」とか言って
賞賛すれば良いのか?
しかもその衣類、まごう事なき下着だ。それもかなりセクシーな
ものだと拝見した。
そんな姿を拝見した際に、男として何を言って良いのか。
それともすんなりと行動に移すべきのであろうかと、色々と
思案もするが、そのどれもが正解にはほど遠いような気がする。


そう言えば、依然読んだ雑誌の占いコーナーで 女難のとか
書いてあったような気がした。
でも彼女は女神さまっであって、女性ではない。とすると占いは
問題外と言えよう。
しかし、この現状はどうだ?
一線を越える事はやぶさかではないが、それにしても肝心の
俺の心の準備が整ってない。
さらにこの状況がウルドの薦めと言う事が気になって仕方ない。


誰かがどこかで、この状況を楽しんでいような気もして
ハッと後ろを振り返ってみるが、杞憂に終わる。
「誰も見てない、よな?」
ゴクリと喉をならしてしまった。


トントンと襖をノックする音が聞こえた。
「螢一さんっ 入っても良いですか?」
ベルダンディーが着た。ついに御出ましになるって寸法だ。
さてさて、彼女は一体どんな姿で登場するのだろうか...


女神ウルドの『恋の必勝講座』1.


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6月ですね。入梅宣言は何時かなぁ。