kiss kiss kiss

「カーット!」
「おつかれさまー」
撮影スタジオの緊張感がいっぺんに緩和した。
それぞれのスタッフから自然に笑みがこぼれる瞬間だ。
ベルダンディーは、そのままディレクターチェアーに座り
側にあったシナリオをチェックした。
監督の意向のままに、あのキスシーンを再現したのは
作品にとって良い事だと思うのだけど、どうにも解せない。


”どうして?”と疑問が心に過ぎる。


「おつかれさま ベルダンディー
その声はパートナーの森里螢一の声だ。
「あ、お疲れ様です 螢一さんっ」
そっと肩に置いてくれた手が嬉しいと感じた。
「あっと…その、ゴメン」
少し目線を逸らしながら、螢一は謝る。
「?」それから、少し間を置いて「!」


「うん、イヤだよ、ね…その」
「キスの事?」
「う、うん・・・」
「だって、あれは演技ですもの」
「だけど」
「気にしてないと言えばウソになりますが、でも」
「でも?」
「私へのキスとは違うもの」
「うん」
ほら、少し気分が晴れてきた。


それは一陣の通り過ぎる風のような感じだった。


チュ。


「あ…」
唇を撫でた彼の優しい気持ちのようなキスと
はにかんだ少年のような、ステキな微笑をくれた螢一さん。


 だいすき!


by belldan Goddess Life.


*** *** ***


そんな夢を・・・見たような、見てないような