君に届けと追い風が 2

思わず飛び出した俺の格好と来たら、Tシャツ一枚だった。
風は少し冷たく感じられたが、むしろその方が良いと思った。
上気した頬に当たる風が、そのまま頭まで冷してくれる。
どんな理由にせよ、彼女を悲しませた事は良くない事だ。
「ちゃんと理由を説明しないと」 螢一は言葉にした。


母屋から少し離れた鐘撞堂の石段を登って、本堂を見る。
広い屋根の上に、小さく彼女のシルエットが見えた。
「いた!」
風にたなびくベルダンディーの亜麻色の髪が揺れている。
その動きが、何故だか彼女の切ない気持ちを表現している
みたいに見えてくる。
急がないと…螢一は思う。だけど、どうやって屋根まで登れば
良いのだろうと思案に暮れてしまう。


すぐそこに、ベルダンディーは居るんだ。
それなのに、ただ登れないと言うだけで、傍に行けない。
こんな理不尽ってあるのか?
それとも、これが現実って言うヤツなのか?


手を伸ばしても届かない、夜空に煌く星のように…


と言っても、現在はお昼なのだが…


俺は、なんてセンチメンタルなんだ、と螢一は苦笑した。
ちょっと苦笑しただけなのに、少し冷静になった自分を発見
したと同時に、母屋の玄関先に ばんぺい君RXが居るのを
発見した。
そうだ!彼に頼んでみるのはどうだろうか?
「お〜い、ばんぺい〜!」
螢一は母屋に向かって声を出した。
「Pi?」
ばんぺい君RXは、螢一の方を向いて返事をする。


螢一は、ばんぺい君RXの傍まで駆けて行って
彼にそっと耳打ちした。
螢一の言葉を聞いて、ばんぺい君RXは、本堂の屋根を見上げ
もう一度、螢一の顔を見た。


ばんぺい君RXは、螢一の言葉を反芻する。


「俺の大事な人の元に行きたいんだ」
「それは俺の愛する人だからなんだ」
「俺を助けてはくれないだろうか」
「君の力が必要なんだ」


「オレノアイスルヒトヲタスケタイ…!」



 君に届けと追い風が。(その2)


by belldan Goddess Life.


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そんな訳で続きを。ばんぺい君RXの登場!(じゃじゃーん)