君に届けと追い風が 3

その時一瞬、ばんぺい君RXがうなずいた気がした。


対魔属用汎用兵器、ばんぺい君RXには数々のオプションが
用意されており、如何なる場面にも対峙出来るような仕様が
スクルドから施されていた。
ばんぺい君RXは、すぐさまスクルドの部屋に向かい
とある装置を装填して再登場するのだった。


「おぉ!それはまさに…飛行装置!」
大空に羽ばたかんとする白き翼を背に纏い、さながらイカロス
の如くの様を呈していた。
そうか…ばんぺいの奴、俺を背負って本堂の屋根へと飛翔する
算段なんだな、と螢一は確信するのだった。


この時ばかりは、スクルドの発明に感謝する螢一だった。


「ありがとう、スクルド…君の発明は、スバラシイ…」
ちょっと涙ぐんでしまったじゃないか!と螢一は思う。


さて、それじゃあ ばんぺい君の背中にまたがって…


「え?」
ばんぺい君RXは、螢一を尻目に飛び立とうとしている。
「あれ?」
飛び立つ瞬間、何時の間にか掌を五本指のマニュピレーターに
変えていた彼の親指が、グィとつき上げられている。
「ええー!」
よく見ると、彼ののっぺらな顔にはウインクしている表情を
上手にマジックで描かれていた。
「な、なんで?」


ばんぺい君RXは、AIの片隅にあった微か記憶の断片を
先ほど聞いた螢一の言葉によって、見事に再生していた。


つまり、スイッチが入ってしまった、と言う事だ。


ばんぺい君RXの体が重力に反して、ふわりと宙に浮かぶと
ベルダンディーの居る本堂の屋根に向かって急上昇していった。


「ダイジョウブ キットタスケテアゲル」


螢一は、空へと小さくなって行く ばんぺい君RXを
ただ見詰めるしか術はなかった...。


 君に届けと追い風が。(その3)


by belldan Goddess Life.


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あれ?話が違うじゃまいか?
ちょっと誤字を発見。それはともかく、日中の暑さは異常。
すげー汗かいた。マジで風邪引く5秒前って感じ。