君に届けと追い風が

「もしかして・・・」
もしかしたら、もう螢一さんっに私は必要ではないの?


秋の風が深まる、ある11月の夕暮れに、憂いを帯びた瞳の
女神さまっが、お寺の本堂の屋根の上に佇んでいた。
時折冷たい風が通り過ぎて行く。その風に長い髪がさらされて
切なく絡み取られて行く。胸がキュッと痛んだ。
ベルダンディーは両手を胸に組み、暮れて行く西の空を眺める。
「・・・螢一さんっ」
そして、一筋の涙が頬を伝って行った。


何とか一人になった螢一は、風邪の予防として新しいシャツに
袖を通して、それから洗面所でウガイをし、ちゃんとした市販の
風邪薬を服用した。
「風邪なんて、引いてられないもんな」
これから年末にさしかかる。仕事も忙しくなりそうだ。


それに今年のクリスマスこそ、ちゃんと彼女を誘って…


「うん、俺たちは大丈夫だっ」
洗面所の鏡を見て、自身の面構えを点検して、螢一はうなずく。



ところが、話はそうそう上手くは行かないのね。


「何がダイジョブなのよっ あの娘…泣いてたわよっ」
洗面所を出た所で、ウルドと出くわした。
神妙な面持ちのウルドは、さらに
「あの娘の生き甲斐を無下に断るだなんて…酷い事するわねぇ」
ヤレヤレと両手を挙げて、ウルドは踵を返す。


「な…なんだって! でも、何で?」
螢一は、ウルドを呼び止めた。
「何で?って・・・」 ウルドは溜息を付いた。そして
「着替えくらい、手伝わせてあげないさいよっ」


「ちょ、ちょっと待ってよ…それはウルドが覗くから・・・」
「それが、あたしの生き甲斐なんだから、良いのよ」


えっ?ウルドの生き甲斐が覗き・・・なのか?
だから許されるのか?それで良いのか?
しかも、それがそもそも原因で俺は一人で着替えをしたかった。
ただ、それだけなんだけど・・・。


だけど、今はとにかく、ベルダンディーを探さないと。
本堂の屋根の上に居るって言ってたよな。
「ちょっと行って来る」
「がんばれよー青年っ!」
ウルドは目を細めて、螢一を見送った。


 君に届けと追い風が。(続く)


by belldan Goddess Life.


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アニメ「君に届け」 良いですね♪
毎回モニターが曇って、ちゃんと見えません。何故でしょう。