君に届けと追い風が 4

本堂の屋根に、今まさに到達しようとしている 
ばんぺい君RXだったが、ターゲットのベルダンディーの傍で
ある異変が起きている事に気が付いた。
「にゃあにゃあー!」
本堂の屋根裏に住む野良猫達である。
夥しい数の猫達が、ベルダンディーに向かって駆けていく。
その数、実に100匹は居ると推測された。


上空に暗い影が出来る。
見上げると、たくさんの鳥達の群れが本堂の屋根を取り囲む
ようにして旋回している。
寺の境内にも居たスズメ達も馳せ参じている。


思わぬ伏兵に、作戦が決行出来ない ばんぺい君RXは
プランをAからBへと移行を余儀なくされる。


プランB・・・


一方、地上でがっくりと膝を地に付いていた螢一だったが
上空の異変と、何やら屋根の上で猫達が騒いでいるのを
訝しく感じていた。
「まさか・・・このドサクサに紛れて魔属たちが?!」
螢一は辺りを注意深く索敵した。周囲には異常は感じない。
もっとも、螢一に女神さまっのような感覚は無いのだが
取り合えず過去の事件を参考にして、素早く考えた訳だ。


背後に気配を感じた。すわっ!魔属のお出ましかっ!?
と、恐る恐る振り向くと・・・


「何やってるのよ、青年っ」
ウルドが気だるそうに、声を掛けた。
「なんだ・・・ウルドかぁ...」
安堵とも何とも言えない溜息を付きながら、螢一は
ホッと胸を撫で下ろした。
「なんだ、とは何よっ!」
「いや、ナンデモない、です」
この状況下で、ウルドが魔属を感じでいないのは幸いな事だ。
それを思うと、いつもの高飛車で鷹揚な態度も嬉しく感じる。


「ところで、さ・・・どうなってるの?それにこの状態って?」
ウルドは腕を組み、不思議そうに本堂の屋根を見上げた。
「それが・・・俺にもさっぱり・・・」
困惑顔を見せる螢一だった。


「まぁ、こんな自然現象は日常茶飯事だもんね、あの娘には」
そう言って、目を細めるウルドだが、
「でもさ・・・ちょっと尋常な数じゃないわよねぇ…」
と、この状況を理解するのに手こずっていた。
「それから、ちょっと聞くけど…何で ばんぺい君が空へ?」
螢一は、事の次第を話した。


「『助けに行きたいんだ』そう告げたんだ・けど…?」
「ああ、なるほどねぇ…それでこの有様なんだわねぇ」
ククッと笑いを堪えきれないウルドは
「もしかしたら、ばんぺい君の中の妙なスイッチが入って…」
そこまで言うと、ゲラゲラと大笑いし始めた。


ひとしきり笑い終えたウルドは、少し神妙に
「どこまでも似ているんだわねぇ…クククッ」
「何が? その似ているんだ?」
「そうねぇ…一言で言うなら、一途って所かしら?」


一途? それって…


さて、ブランB決行を決めた ばんぺい君RXは、上空で
方向転換を決めると、一目散の地上を目指していた。


ブランB…もしかして、戦略的撤退の事なのか!?


本堂の屋根の上は、猫の大群で、もはやベルダンディー
姿は見えない。
そして、その上空には夥しい数の鳥達が旋回から、着陸態勢に
入っていた。


ベルダンディーは無事なのか? それとも…
もはや、一刻の猶予も許されない状況であった。
ベルダンディー!! 今助けに行くからー!!」
螢一の声が、虚しく空に響き渡った。



 君に届けと追い風が。(その4)


by belldan Goddess Life.


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もちろんこの話はラブロマンスでっす(笑)
週末にたくさん更新できて良かったですー!
ありがとうございます。


ところで、本当にベルちゃんは大丈夫なのかなぁ...