君に届けと追い風が 5

地上の喧騒を他所に、本堂の屋根の上のベルダンディー
センチメンタルな気分から一転して、今夜の献立にご執心
なのであった。
「どうしましょう・・・秋の旬と言えば?」
顎に人差し指を当て、少し傾けた顔は、少しあどけなくも
熟練の主婦の様を呈していた。
「うん、螢一さんっの健康の事も考えてっと・・・あら?」


ベルダンディーが周囲を見渡すと、累々とした数の猫たちが
心配そうに彼女を見詰めている。
先頭に立っていたボス猫が「にゃあ!」と鳴いた。


要約すると・・・


ベルダンディーさんの一大事だと聞いて、我々馳せ参じて
参りました! 何かお困りの事でもあるんですか?それとも
猫の手も借りたいほどのお忙しさに、身も心も疲れたとか」


ベルダンディーは猫たちの心配を聞いて、微笑で答える。
「ありがとうございます、猫さん達。でも私は大丈夫ですよ
ちょっと一休みしているだけですから」


猫たちは口々に「にゃ〜ん」と安堵の声を上げる。


頭上からも声が聞こえた。沢山の鳥たちの声だ。
いつも庭に遊びに来ている小鳥たちも混じっていた。
みんな、とても心配そうに見ていたのだが、先の話を聞いて
安心したようだった。
「鳥さん達もありがとう・・・ごめんなさいね、心配をかけて」


ベルダンディーの微笑を確認した鳥たちは、それぞれの巣に
帰って行く。



一方、地上では・・・


「今、助けにいくから! でも、どうやって・・・?」
螢一には、飛行機能も法術も使えない。思案していた所に
ばんぺい君RXが帰って来た。
「ば、ばんぺい君! 状況は?」
螢一は、戦況の詳細を尋ねた。
「・・・Pi ?」
う〜ん、これは通訳がいるよな〜と螢一は思う。
そこに登場したのが、スクルド謹製のアンドロイドである
シーグルであった。


「もう!ばんぺいのヤツ、居ないと思ったら、こんな所で
遊んでいたのねっ!」
少々ご立腹な感じで、シーグルはツンツンしていた。


バツの悪そうな ばんぺい君RXであった。
「で?何しているの?」
シーグルが尋ねる。
「Pi!!!!!!!!」
ばんぺい君RXは、真摯な説明を敢行しているようだ。
「なるほどねぇ・・・で、アンタはもどって来たわけ?」
シュンとしている ばんぺい君RX。


「Pi〜!」
「戦略的撤退って言ってほしい? バッカじゃないの!?」
「・・・Pi」
「何謝っているのよ!え?何?助けてあげてほしいって?」
「Pi!」
「誰を? ええー!」
驚いて螢一を見詰めるシーグルだった。


その間、ウルドはずっと笑っていたのだが、これもまた
何とかしてほしいなぁ、と螢一は思っていた。



 君に届けと追い風が。(その5)


by belldan Goddess Life.


*** *** ***


スクルドは仙太郎君とデート中である(笑)