君に届けと追い風が 6

そして、しばし沈思していたシーグルだったが、おもむろに
螢一の元へと歩み寄った。
「で、アタシは何をすれば良いわけ?」
ムッとした表情は、そのままムクレたスクルドそのままだ。
「あ、いや…特に何とは…」
とっさに聞かれたものだから、名案は浮かぶ筈もなくて。


「むー!あ、そ…じゃあ良いわ、アタシは忙しいから」
そう言って踵を返そうとするシーグルを、オロオロと見ている
ばんぺい君RXは、哀願するように螢一を見詰めるのだった。


ばんぺい君RXにも意地がある。プライドもある。
最愛の人(アンドロイドだが)へのメンツもあるんだ。
何の為に彼が飛行装置を取り付け本堂の屋根へと向ったか
そして、戦略的撤退をしたのか、その理由付けも欲しかった。


「どーしろと?」
妙な四面楚歌みたいな状況だが、これもまた予定調和であって
ほしいなーと思うのは、主人公の願いでもある訳だ。



「お困りのようねっ!」


来た!その声は、まさに救いの女神さまっの声だ、と思う?



「ウ、ウルド…頼むから、これ以上複雑にしないでくれ…」
と願い空しく、ウルドはシーグルの耳元で、こそこそと
内緒話をし出した。


「ほうほう」
「で…こうして、だから、うんうん、正解!」


*** *** ***


「てな訳でぇ〜出来ました!」
「コ、コラーばんぺい!フラフラしちゃ、ダメだからねっ」
「ナ、ナンデスカ、コレハ?」
じゃじゃーん、両手を広げてお披露目しているのはウルド。
で、何故かシーグルを肩車している、ばんぺい君RX。


ウルドはつかつかと螢一の元までヒールを鳴らして来て
「このウルドさまっに任せなさーい!」
と何時も以上に胸をバーンと張った。 デカイよね。
デカイはともかく、どうしてシーグルとばんぺい君RXが
合体しているんだろうと悩む。
「任せるも何も…何コレ?」
螢一は、シーグルとばんぺい君RXを指差した。


「これはねぇ…キミとカノジョを結ぶ、愛の飛行台なのよっ」
と自信満々なウルドだった。
説明にもなってねぇ、と螢一は思うのだが、まさかコレに
乗って、飛び立つって言うんじゃないだろうな?


ふと空を見上げた。
先程まで群れ成していた鳥たちの姿がみえなくなっている。
もしかして、何かの異変か?そう思うと急に藁をもすがるよう
な気持ちにもなってくるのが人情だ。
「と、とにかく…コレはどう使うんだ?」
何か、とてもイヤな予感しかしないのだが、この際黙って
提案に乗るしか道は無いような気がした螢一だった。



 君に届けと追い風が。(その6)


by belldan Goddess Life.


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ホント、最近急に寒くなってイヤですわねぇ...