君に届けと追い風が 10

よくよく考えたら、ウルドに借りた、この神衣だけで屋根まで
行けたんじゃないかな?
それに踏み台があれば、それは難なく実行出来たと思うんだ。
なのに、何でばんぺい君を砲台にして、シーグルのパンチ受けて
こんなに空高く上昇しなければならないんだろう、と螢一は
下降しながら考える。


「何て回りクドイ事を…」


でも、神衣を纏っているおかげで、すごいGは感じられない。
むしろ風が心地良く感じて、爽快な気分になってくる。
もしかしたら、ベルダンディーも、こんな風に感じているのか
なぁ、と思った。


女神たちが、この地上界に降臨する時と同じような気持ちに
なれた事、それはあくまで擬似体験なんだけど、何て言うか
思いを共有出来たのかも?
そうすると、その際のベルダンディーの気持ちが見えてくる
そんな気がした。


ベルダンディーの気持ち…


「螢一さ〜ん!」
ふと下界を見ると、愛しい女神さまっが、こちらに向かって
飛んで来ているではないか。
「べ、ベルダンディー!」
その声に呼応するように、螢一も声に出した。


差し出した掌、それはお互いが求めて止まぬ思いのピースが
重なり合いたいと願う行動だった。
空中で互いを求め、探り、やっと手にした愛しいピースは
次には抱き寄せる事を要求する。
空を飛ぶ事が出来ない螢一は、ベルダンディーの手に導かれて
ようやく空中で一息付く事が出来た。
「ベ、ベルダンディー! その、君を助けにきたんだ…」
「そうなんですか!ありがとうございますっ 嬉しいっ」
とは言うものの、むしろ螢一の方が助けて貰っている状態だが。


「と、その…さっきはゴメン…」
「螢一さんっ?」
「あ、あのさ…手伝ってくれる君を邪険にしちゃったから…」
「いいえ、私こそ…出しゃばった真似をして…」
「ち、違うんだ! その上手く言えないけど…」
「螢一さんっ?」
「あの…うん、本当は嬉しかったんだ、でもね…」
螢一は照れ笑いしながら、言葉を続ける。
「次は、ふたりだけの時が、その、良いかな?なんて…」


ベルダンディーの顔が、さらに色彩を帯びて金色に光るように
見える。
オーラとでも言えば良いのだろうか。
その光が、視界に見える範疇を超えて広がって行く。


「はいっ!螢一さんっ!」
ベルダンディーはそう言うと、螢一を抱き寄せるようにして
螢一の肩にもたれ掛かかるのだった。
「嬉しい…本当は、嫌われた、のかな、と思って…」
そう言うと、少し涙声になってしまった。


ベルダンディー?」
「…螢一さんっ…」
「ごめん、もう悲しませる事はしないよ」
螢一は、ベルダンディーの背中に回した腕に力を入れた。


「螢一さんっ 大好きっ」
ベルダンディーは、螢一の耳元に、そう告げるのだった。


 君に届けと追い風が。(その10)


by belldan Goddess Life.


*** *** ***


そろそろクライマックスですよねー。 ですかね?