12月の街路で

12月のこの頃には、街頭もクリスマスの電飾で飾られて
まるで、世界は着飾った紳士淑女のような佇まいを呈している。
記憶に残るクリスマスってあるかい?そんな自問をして、ふと
傍らで微笑む女神さまっの横顔を見た。
俺たちのクリスマスって、ほんと、ロクデモない事が多かった
そんな気もする。
初めてベルダンディーに、感謝の気持ちとしての贈り物をした時も
その次の年も、その次の年も…


ずっと傍に居てくれる女神さまっの事を考えてみようと思った。
ほら、いわゆる傍観的側面ってヤツさ。
もし、俺があの時、あんなお願いをしなければ、彼女は此処には
居なかったのだろうか、とか。
例えば、別の願い事とか。そう、本当に単純な動機ってヤツで
「願い事は…そうだ、バイク屋さんをしたいんだっ」とか。
とは言うものの、現在バイクショップで働いているので、経由は
どうであれ、それも叶った、と言って良いんだろうな。


その時点で、先程思った願い事が選考され、受理されたとしても
彼女は、俺の傍にいたのかな?
これは俺の自惚れ。そんな事は無いと思う。いや、少しはあるか?


「…一さんっ? 螢一さんっ?」


不思議そうな顔をして、螢一の顔を覗き込んだベルダンディー


「え?…あ、うん…」
「考え事、でしょうか?」
「…ちょ、ちょっとね」


螢一はそう言うと、思っている事を悟られまいと、街路に意識を
向ける。
すでに辺りは夕暮れ時で、街路のイルミネーションもその姿を
キラキラとさせていた。


「今年も、賑やかだなぁ…」


螢一は、猫実商店街の飾り付けに目を遣りながら言った。


「そうですねっ 本当にきれいだわっ」


ベルダンディーは、とても嬉しそうに笑った。


きれい…それは君の事だよ、と螢一は思った。
その日、ベルダンディーは真っ白なモールのワンピースを纏って
手には小さな赤いバックを携えていた。そして共柄のヒールの靴。
雪の季節にはまだ早いのだけど、こんな風にして季節感を演出する
女神さまっの優美な感覚って、俺には無いよな、と螢一は感じる。


俺たち…他人から見て、どう思われている、のかな?


「螢一さんっ…どうかしたのですか?」


心配そうな顔をして、螢一を見詰める女神の瞳には
少し情けない男の顔が映っていた。


ちょっと思案し、それからベルダンディーはおもむろに螢一の腕を
取り、そっと身を寄せた。
それからもう一度、螢一の顔をマジマジと見詰めて


「螢一さんっの傍が良いです。暖かい…」


「ウフっ」と、笑い、そして組んだ腕に力を入れた。


今年のクリスマスも、もうすぐだ。
どんな日になるんだろうか、と螢一は考えるのだが、下手な考えは
休むに似たりって言うしな、と苦笑い。
例え、どんなサプライズがあったとしても、それはそれだ。


それは俺たちの、楽しい思い出になるんだから。


螢一はベルダンディーの幸福そうな横顔を見て、そして街路を
自分たちの前を見た。
街路の装飾は、まるでふたりを祝福しているかのようにも見える。


「そろそろ、クリスマスだよね」
「ええ、とっても楽しみですねっ」


イルミネーションの光で出来た、ふたりのシルエットは
その時、さらに重なっていた。


 12月の街路で。


by belldan Goddess Life.


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個人的には、クリスマスなんてアリマセン(号泣)
でも、それはそれ、コレはコレ。